抄録
14歳齢,雌の雑種犬に,上眼瞼内側より発生し眼瞼裂の約70%を被う腫瘤が生じた。生検材料の病理組織学的検査で,腫瘤は脂腺細胞様の大型で空胞を持つ腫瘍細胞により構成され,大小の小葉を形成していたが,リザーブ細胞様の小型細胞の増殖は認めなかった。腫瘍細胞の核は異型性を持ち,分裂像が見られ,さらにproliferating cell nuclear antigen 陽性核も認められた。以上の所見より,マイボーム腺癌と診断した。癌細胞は分化し,正常脂腺細胞ないしマイボーム腺細胞と似るため,細胞診では分裂像が認められないときには良性と診断される可能性があり,臨床的に非典型病変を示す例では必ず組織検査が必要である。