抄録
9歳の雑種,去勢雄犬の左後肢肉球に腫瘍が認められた。組織学的には,線維形成性に不規則な腺腔構造が増殖し,腺腔内面にはアポクリン分泌像が認められた。腫瘍内には,腺腔形成性に増殖する立方形~多角形の上皮性腫瘍細胞の他に,軟骨様基質に接して増殖する紡錘形細胞で構成される結節状病巣も認められた。上皮性腫瘍細胞には異型性が認められ,核分裂像は高頻度に認められた。免疫組織化学的に,上皮性腫瘍細胞は,サイトケラチン(AE1/AE3及びサイトケラチン8)に陽性を示し,紡錘形腫瘍細胞は,ビメンチンに陽性を示したが,サイトケラチン及び平滑筋アクチンには陰性であった。以上より本例を混合型汗腺腺癌と診断した。腫瘍は摘出後約6ヶ月で肺に転移した。