獣医臨床皮膚科
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短報
不妊手術後に発症した性ホルモン失調の犬の1例
石川 記代西藤 公司桐木 康太郎田中 知己岩崎 利郎
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2008 年 14 巻 4 号 p. 195-197

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抄録

5歳齢,不妊雌のシェットランド・シープドッグが,6ヶ月前からの進行性の脱毛を主訴に受診した。初診時,頚部腹側,腹部および大腿後縁に左右対称性の脱毛ならびに斑状の色素沈着を認め,また外陰部の腫脹および乳頭の腫大を認めた。病変部においてかゆみ動作は認められなかった。ACTH刺激前後において血清中のホルモン値(エストラジオール,17 α-OHP,プロジェステロン,テストステロン,コルチゾール)には異常を認めなかったが,脱毛の増悪時には腟垢細胞の多くを完全角化細胞が占めたことから,性ホルモン異常の関与を疑った。試験開腹により右側卵巣遺残が肉眼的に観察されたことから,これを外科的に切除した。術後21日目より被毛の再生を認め,術後187日目には被毛はほぼ正常まで回復した。以上より,自験例を卵巣遺残に関連した性ホルモン失調と診断した。また自験例より,血清性ホルモン値に異常値を認めない症例において,経時的な膣垢鏡検が性ホルモン失調の診断に有用となる可能性が示唆された。

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© 2008 日本獣医皮膚科学会
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