2011 年 17 巻 1 号 p. 15-19
8歳2カ月齢の去勢済雄犬が,左耳から膿様浸出物が漏出し始めたため受診した。浸出物の塗抹染色標本で多数の細菌と好中球が検出され,細菌性外耳炎と診断した。抗生物質の投与,耳の洗浄を繰り返して実施したが改善は見られなかった。8歳9カ月齢時に,左耳の外耳道に直径5 mmほどの結節の形成に気づき,結節は9歳5カ月齢時に外耳道を塞ぐほど大きくなったため,吸入麻酔を施し半導体レーザーメスを使用して外科的に切除した。手術後,抗生物質と βグルカン製剤を投与したところ,外耳炎は速やかに完治した。病理組織学的に結節は,高度な耳垢腺の過形成を伴った高分化型扁平上皮癌と診断された。術後4年3カ月での扁平上皮癌の再発と転移は認められていない。