抄録
石川県小松市の低山地で衰弱したニホンカモシカの幼獣が保護された。この動物は保護された時, 削痩しており, 左前後肢蹄冠部付近の皮膚には, 広範囲にわたって角質化が亢進した柵状構造の膿瘍が認められ, 口唇部にも赤色結節が見られた。翌日死亡したので剖検し, 病理組織学的, および病原学的に検索を行った。組織学的には有棘層における空胞変性, および細胞質内には両染性の封入体の散在が認められた。また培養細胞を用いてウイルス分離を試みたところ, 牛胎子睾丸細胞にCPEが出現し, その細胞の電顕観察によりパラポックス様ウイルス粒子を確認した。