日本野生動物医学会誌
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1 巻 , 2 号
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総説
原著論文
  • 稲葉 智之, 高橋 和明
    1996 年 1 巻 2 号 p. 87-92
    発行日: 1996年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    ジャイアントパンダの疑似母指は"パンダの親指"として有名であるが, レッサーパンダの疑似母指骨格に関する報告はほとんどみられない。本報告では2例のレッサーパンダを用いて, 主要骨格の所見ならびに手根部骨格のひとつである橈側種子骨の形態とそれに付着する筋肉などについて調べた。手根部骨格は, 他の食肉目と同様に7種の骨からできており, 中間橈側手根骨の外側には1個または2個の種子骨がみられた。この橈側種子骨は第一中手骨の2分の1程度の長さがあった。2例から橈側種子骨の発生過程を考察すると, 初めから大きな種子骨ができるのではなく, 2種類の筋肉内で各々に発生, 成長した種子骨が合体して形成されると考えられた。橈側種子骨には, 短第一指外転筋と短第一指屈筋ならびに長第一指外転筋が付着していた。また, 橈側種子骨の外側を固定する靱帯としては, 手根種子骨外側靱帯と中手種子骨背側靱帯があり, 手掌側を固定する靱帯として手根横断靱帯と手根種子骨手掌靱帯が認められた。レッサーパンダの橈側種子骨は, ジャイアントパンダと同じように疑似母指として機能可能な運動性を有することが示唆された。
  • 矢田 新平, 村上 俊明, 小澤 正, 北野 寿
    1996 年 1 巻 2 号 p. 93-97
    発行日: 1996年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    石川県小松市の低山地で衰弱したニホンカモシカの幼獣が保護された。この動物は保護された時, 削痩しており, 左前後肢蹄冠部付近の皮膚には, 広範囲にわたって角質化が亢進した柵状構造の膿瘍が認められ, 口唇部にも赤色結節が見られた。翌日死亡したので剖検し, 病理組織学的, および病原学的に検索を行った。組織学的には有棘層における空胞変性, および細胞質内には両染性の封入体の散在が認められた。また培養細胞を用いてウイルス分離を試みたところ, 牛胎子睾丸細胞にCPEが出現し, その細胞の電顕観察によりパラポックス様ウイルス粒子を確認した。
  • 吉川 博康, 藤原 弘明, 李 力権, 夏 志平, 潘 耀謙, 王 水琴, 吉川 尭
    1996 年 1 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 1996年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    中国吉林省の鹿牧場で、全身諸骨に骨瘤を形成した8歳と9歳の梅花鹿Cervus nippon Temminckの2例について病理学的検索を行った。いずれの症例も約7か月間, 体重比で1.08〜1.60mg/kg/dayのフッ素が混入した飼料が給与されていた。検索例の骨瘤組織中におけるフッ素含有量は499.00〜1,069.00ppmであった。剖検では四肢骨, 顔面骨などに大小の骨瘤を形成していた。病理組織学的には, 外骨膜結合組織の増生と軟骨および骨化, 類骨増生ないし新生骨梁の形成を特徴としていた。それら骨病変はPeriosteal hyperostosesの範疇に属するものと思われた。
  • 村田 浩一, 滝 導博
    1996 年 1 巻 2 号 p. 105-108
    発行日: 1996年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    飼育下ペンギンで問題になっている肺アスペルギルス症(肺ア症)の診断法のひとつとして, 血液中にAspergillus spp.のガラクトマンナン抗原を検出する方法を検討した。検査にはラテックス凝集反応で本抗原を検出するヒト用診断キット(パストレックス アスペルギルス)を用いた。肺ア症で死亡したペンギン3種4個体中3個体から本抗原が検出された。抗原陰性であった1個体は抗体陽性であった。病鳥および健康鳥の6種26個体を調べた結果では, 臨床的に肺ア症が疑診されたペンギン2個体が陽性で, 2個体が疑陽性を示した。このうち3個体に対して抗真菌剤を投与したところ再検査で抗原が陰性になった。肺ア症以外の疾病が診断された14個体および健康な8個体から抗原は検出されなかった。本法は従来より診断が困難であったペンギン肺ア症の診断法のひとつとして有用であろう。しかし, 診断をより確実なものにするためには, 抗体検出などの他の検査方法も併せて用いる必要がある。
  • 小口 洋子, 増田 裕子, 片岡 智徳, 三宅 ゆかり, 高島 一昭, 山根 久恵, 久野 由博, 政田 早苗, 長沢 裕, 山本 滋, 廣 ...
    1996 年 1 巻 2 号 p. 109-111
    発行日: 1996年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    トビの心電図の正常像を把握する目的で, イソフルレン麻酔下, 仰臥位にて臨床上健康と思われるトビ5羽の心電図(双極肢誘導)を記録した。平均心拍数は312〜375beats/minで, 左軸から右軸位を呈していた。P波はI, II誘導で陽性(0.15〜0.55mV)で, 長さは15〜20msecであった。S波はII, III, aVFで認められ, 0.5〜1.4mVであった。PQ間隔は55〜70msec, QRSの幅は20〜30msecであった。T波は電位が低く, 基線と判別困難であったのでQT間隔は計測できなかった。
  • 喜多 功, 鈴木 法子, 丹羽 範郎, 坪田 敏男
    1996 年 1 巻 2 号 p. 113-117
    発行日: 1996年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    成熟雌ニホンカモシカCapricornis crispus30頭の子宮壁動脈を組織学的に検索した結果, 経産カモシカの子宮壁動脈に妊娠性硬変が見出された。すなわち, 未経産成雌の子宮壁動脈では, 内弾性板は薄く, その屈曲は単純であったが, 1〜3産例の子宮壁動脈では, 内弾性板は厚く明瞭で, 複雑な屈曲を示していた。5産以上の例では, 子宮壁動脈に2層以上の弾性板様構造物が出現し, 中膜における弾性線維の増加と平滑筋細胞の核の変性が観察された。8産以上になると子宮壁動脈の中膜に弾性線維の変性(エラストージス)および平滑筋細胞の核の変性・消失が起こった。以上のことから, 子宮壁の組織学的検査によって, 産歴不明のカモシカ個体における経産の判定および経産回数の推定が可能と思われた。
  • 白石 利郎, 中口 良子, 羽山 伸一, 時田 昇臣, 古林 賢恒, 山根 正伸
    1996 年 1 巻 2 号 p. 119-124
    発行日: 1996年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    飼育下における年齢や性の異なる17頭のニホンジカを用い, 各個体の体重および集団の月毎の採食量の変化について, 1993年の8月から1年間にわたって調査した。9月から11月の発情期には, 成獣雄, 成獣雌および亜成獣雄の体重は減少傾向にあったが, 亜成獣雌や幼獣はこの間も成長し続けた。12月から3月までの越冬期には, 十分な餌が与えられているにもかかわらず, 総ての個体の体重にあまり大きな変化は見られなかった。4月から7月の出産育子期には, 全体的に体重は増加傾向となり, 特に前年生まれの幼獣および1994年生まれの幼獣の体重増加が顕著であった。ただし, 成獣雌および亜成獣雌の体重は出産によって約6kg減少し, その後も回復は見られなかった。この集団における月平均の代謝体重当たりの乾物(DM)摂取量は, 9月に一時減少し, 10月に再び高くなった。11月から3月までの間には大きな変化はなかったが, 4月から急激に増加する傾向が見られた。また, 代謝体重当たりの可消化エネルギー(DE)摂取量の変化も, DM摂取量の変化とほぼ同様であった。これらの結果から代謝体重当たりのDM摂取量がおよそ65gになると代謝体重の増加量が0となることが推定でき, 体重維持に必要なDE要求量は約196kcalであることが推定できた。
  • 高見 一利, 吉田 光敏, 番場 公雄
    1996 年 1 巻 2 号 p. 125-130
    発行日: 1996年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    食肉目ハイエナ科に属するシマハイエナ(Hyaena hyaena)について, Polymerase Chain Reaction(PCR)法を用いた性判別法の開発を試みた。検体にはシマハイエナの白血球および毛根を使用した。性決定遺伝子Sex-determining region Y(SRY)領域を増幅するプライマーを用いてPCR法を行ったところ, いずれの検体についても雄のみに214bpのSRY領域と考えられるDNAバンドが検出され, 雌では検出されなかった。したがってSRY領域はシマハイエナにおいても雄のみに特異的に存在することが明らかとなった。さらに検出感度の検定を行ったところ, 白血球を検体とした場合には推定細胞数100個以上で, 毛根を検体とした場合には体毛1本以上でそれぞれ検出可能であった。以上の結果より簡便かつ高感度である本法は, 今後シマハイエナに対する実用的な判別法として適用可能であると考えられる。
研究短報
研究報告
  • 馮 文和, 趙 佳, 藤原 昇
    1996 年 1 巻 2 号 p. 135-142
    発行日: 1996年
    公開日: 2018/05/05
    ジャーナル フリー
    ジャイアントパンダの自然における棲息状態をみると, 中国本土においてすら自然環境が徐々にではあるが破壊され, 棲息分布範囲が狭められており, それにともなって個体数も少しずつ減少していく傾向には変わりはない。また, 現在, 中国では14の自然保護区と17の自然棲息地帯, 例えば, 秦嶺山脈や臥龍山脈などがあるが, これらの場所あるいは地域へ人間の侵入を完全に禁止することができれば, 野生パンダの絶滅を少しは遅らせることができるのではないかと思われる。一方, 世界各国に出ているパンダについても, 例えば, 動物園, 研究所およびその他の施設で飼育されているものについては, 人工繁殖などが盛んに実施されており, 成果は上がっているようである。しかし, パンダの繁殖あるいは保育に関する研究は, まだ緒についたばかりで, これからの研究課題である。これまでのところ, 人工繁殖によって得られた子パンダを人工的に保育する技術が確立されておらず, 成獣になる割合は極めて低い現状である。これが今後の問題でもあり, 十分に研究して, その対策を検討することが必要である。したがって, これからは以前にも増して, パンダに関する国際的規模での研究を発展させていく必要があろう。
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