抄録
飼育下ペンギンで問題になっている肺アスペルギルス症(肺ア症)の診断法のひとつとして, 血液中にAspergillus spp.のガラクトマンナン抗原を検出する方法を検討した。検査にはラテックス凝集反応で本抗原を検出するヒト用診断キット(パストレックス アスペルギルス)を用いた。肺ア症で死亡したペンギン3種4個体中3個体から本抗原が検出された。抗原陰性であった1個体は抗体陽性であった。病鳥および健康鳥の6種26個体を調べた結果では, 臨床的に肺ア症が疑診されたペンギン2個体が陽性で, 2個体が疑陽性を示した。このうち3個体に対して抗真菌剤を投与したところ再検査で抗原が陰性になった。肺ア症以外の疾病が診断された14個体および健康な8個体から抗原は検出されなかった。本法は従来より診断が困難であったペンギン肺ア症の診断法のひとつとして有用であろう。しかし, 診断をより確実なものにするためには, 抗体検出などの他の検査方法も併せて用いる必要がある。