日本野生動物医学会誌
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原著
日本の南極海鯨類捕獲調査におけるクロミンククジラBalaenoptera bonaerensis捕殺方法の研究
石川 創重宗 弘久
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2005 年 10 巻 1 号 p. 27-34

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抄録

(財)日本鯨類研究所は, 国際捕鯨取締条約に基づき日本国政府が計画した南極海鯨類捕獲調査(JARPA)を1987/1988年から毎年行い, 生物学的特性値の解明などを目的として年間最大440頭のクロミンククジラを捕獲している。鯨の捕獲には75mm捕鯨砲と爆発銛が用いられ, 即死しない個体については2次的捕殺手段として大口径ライフルもしくは非爆発銛が用いられている。1993/94JARPA∿2000/2001JARPAで捕獲されたクロミンククジラ3246個体の致死時間と即死率を, 捕獲個体の検死で得られた結果と比較分析した。体長との関係では, 鯨の体長が大型化すると致死時間が延長する傾向が見られたが, 即死率は体長6m以下の個体を除き体長に影響されなかった。銛による損傷部位との関係では, 脳(94%), 頸椎および胸椎前部(89%), 心臓(77%)の順に即死率が高く, 頭骨のみの損傷や腹腔臓器および腰尾椎損傷では致死効果が低かった。銛の命中角度は平均36.7°で, 即死個体と非即死個体の間に有意差はなかった。体内の銛の弾道は腹腔→胸腔, 胸腔→頭部, 胸腔の貫通で即死率, 致死時間共に好成績を示し, これらの弾道を狙った射撃を行うことで致死時間の短縮が期待された。日本の捕獲調査ではこれらの分析結果を生かした種々の努力の結果, 即死率, 致死時間ともに年々改善されている。今後は漁具のさらなる改善が課題である。

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