日本野生動物医学会誌
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10 巻 , 1 号
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特集
  • 楠 比呂志
    2005 年 10 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/11/03
    ジャーナル フリー
    地球規模での環境破壊により, 現在, 多くの野生動物が絶滅の危機に立たされており, それらの種の保存は我々人類の急務である。保全繁殖技術(Reproductive Technologies for Species Conservation)とは, 希少動物の種の保存を目的とした繁殖技術を指す。本稿では, 生息地外保全を補完する手段としての保全繁殖技術の役割と重要性について論ずるとともに, その実際として, 生殖子(配偶子や胚)の採取法(人工腟法, マッサージ法, 電気射精法, 死後回収法など)について概説する。
  • 清水 慶子
    2005 年 10 巻 1 号 p. 13-17
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/11/03
    ジャーナル フリー
    近年, 野猿公園のニホンザルにおいて, 餌付けによる急激なサル個体数増加や分布の拡大により, 農作物等の被害が急増し深刻な状況を招いている。また, 自然環境荒廃, 森林植生への影響が懸念されている。これらの対策として環境収容力に応じた適正頭数にまでサル生息頭数を減少させるための避妊法の応用を試みた。野猿公園での実施に先立ち, 室内個別ケージ飼育のサルを用いて, その避妊効果, 安全性, また効果持続期間について検討を行った。その結果, 合成黄体ホルモン含有インプラント法はサルの捕獲, 麻酔, 小手術は必要なものの, 一度の施術で3年程度の排卵抑制効果があり, インプラント剤摘出後は月経, 排卵の回帰が見られ, 正常な妊娠, 出産が確認され, 妊孕性に問題がなく, その効果は可逆的であることが確認された。本法を野猿公園のニホンザルに適用したところ, 出産抑制効果が認められ, 個別ケージ飼育のサルと同様の期間, 効果が持続することが分かった。本法はサル生息環境や群れ構成などの詳細な分析を行い, 長期的な計画のもとに使用することにより, 生息頭数調整法として応用可能と考えられた。
総説
  • 大沼 学, 高橋 裕史, 淺野 玄, 上野 真由美, 鈴木 正嗣, 梶 光一
    2005 年 10 巻 1 号 p. 19-26
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/11/03
    ジャーナル フリー
    エゾシカ(Cervus nippon yesoensis)の生体捕獲調査は, 1981年から本格的に開始され, 現在も北海道の各地で実施されている。この総説では, エゾシカの生体捕獲調査を実施する場合に必要な手法について, 特に化学的不動化法を中心に解説した。生体捕獲方法として, 現在用いられているのは囲いワナ, アルパインキャプチャーシステム, 箱ワナ, 吹き矢および麻酔銃である。また, 不動化薬として使用されているのは塩酸キシラジンー塩酸ケタミン混合液および塩酸メデトミジンー塩酸ケタミン混合液である。前者の混合液を使用する場合, 導入に必要な投与量は, 塩酸キシラジン : 1.2∿2.0mg/kg, 塩酸ケタミン : 1.2∿6.0mg/kgであり, 後者を使用する場合の導入に必要な投与量は, 塩酸メデトミジン : 35.7∿98.4μg/kg, 塩酸ケタミン : 1.6∿7.7mg/kgである。不動化中は, 呼吸数, 心拍数, 体温および粘膜の状態をモニタリングする。前述した混合液を使用した場合は, 体温が38.0∿39.5℃, 心拍数が50∿70回/分, 呼吸数は30∿40回/分の範囲にある。調査終了後, エゾシカを放獣する前に抗生物質と拮抗薬を投与する。拮抗薬である塩酸アチパメゾールは, 塩酸キシラジンを使用した場合にはその投与量の1/10量を, 塩酸メデトミジンを使用した場合にはその投与量の5倍量を筋肉内または静脈内に投与する。
原著
  • 石川 創, 重宗 弘久
    2005 年 10 巻 1 号 p. 27-34
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/11/03
    ジャーナル フリー
    (財)日本鯨類研究所は, 国際捕鯨取締条約に基づき日本国政府が計画した南極海鯨類捕獲調査(JARPA)を1987/1988年から毎年行い, 生物学的特性値の解明などを目的として年間最大440頭のクロミンククジラを捕獲している。鯨の捕獲には75mm捕鯨砲と爆発銛が用いられ, 即死しない個体については2次的捕殺手段として大口径ライフルもしくは非爆発銛が用いられている。1993/94JARPA∿2000/2001JARPAで捕獲されたクロミンククジラ3246個体の致死時間と即死率を, 捕獲個体の検死で得られた結果と比較分析した。体長との関係では, 鯨の体長が大型化すると致死時間が延長する傾向が見られたが, 即死率は体長6m以下の個体を除き体長に影響されなかった。銛による損傷部位との関係では, 脳(94%), 頸椎および胸椎前部(89%), 心臓(77%)の順に即死率が高く, 頭骨のみの損傷や腹腔臓器および腰尾椎損傷では致死効果が低かった。銛の命中角度は平均36.7°で, 即死個体と非即死個体の間に有意差はなかった。体内の銛の弾道は腹腔→胸腔, 胸腔→頭部, 胸腔の貫通で即死率, 致死時間共に好成績を示し, これらの弾道を狙った射撃を行うことで致死時間の短縮が期待された。日本の捕獲調査ではこれらの分析結果を生かした種々の努力の結果, 即死率, 致死時間ともに年々改善されている。今後は漁具のさらなる改善が課題である。
研究短報
  • 佐藤 梓, 中村 茂, 竹田 正人, 村田 浩一, 三橋 陽子, 河井 典子, 田中 律正, 浅川 満彦
    2005 年 10 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/11/03
    ジャーナル フリー
    展示鳥類の寄生蠕虫類の侵淫状況を知る基礎情報の一つとして, 近畿地方で地理的に近接する動物園および関連施設で, 展示あるいは保護収容された22種の鳥類から検出, 保存されていた寄生蠕虫類を同定した。その結果, 17種の蠕虫類(Chapmania tauricollis, Clinostomum complanatum, Corynosoma sp., Capillariidae gen. sp., Thelazia aquillina, Synhimantus (S.) sp., S. (Dispharynx) nasuta, Desportesius invaginatus, Diplotriaena ozouxi, Contracaecum sp., Heterakis isolonche, Heterakis sp., Pseudaspidodera sp., Ascaridia gallinarum, A. hermaphrodita, Ascaridia sp.およびSyngamus sp.)の寄生が確認された。また, S.(Dispharynx)nasutaの一虫体にコルドンが吻合していない異常型を記録した。さらに, レアRheaamericanaに寄生していた条虫C. tauricollistheは日本における新記録であた。また, 鉤頭虫Corynosoma属と線虫Heterakis属について若干の疫学的論議を行った。
  • 遠藤 秀紀, 織田 銑一, Shih Wei CHANG, Shou Li YUAN, Liang Kong LIN, 押田 龍夫
    2005 年 10 巻 1 号 p. 39-41
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/11/03
    ジャーナル フリー
    食虫目から地上性種としてジャコウネズミを, 半地上半地下性種としてモグラジネズミを, 完全地下性種としてアズマモグラを選び, 前肢の4つの筋肉(棘上筋, 棘下筋, 大円筋, 肩甲下筋)の体重に対する重量比率を比較, 肩領域の適応的変化を定量的に明らかにすることを試みた。筋重量の定量的比較から, アズマモグラで大円筋が有意に大きく, 同筋が掘削行動における上腕の内転に適応していることが示された。逆に, 棘上筋はジャコウネズミとモグラジネズミで発達し, 地上性ロコモーションにおいて肩関節の伸展に重要な役割を担っていることが示唆された。また, アズマモグラのような完全地下性の種が大きな棘下筋と肩甲下筋を備えていることが明らかとなり, 棘下筋が掘削運動に必要な屈曲・外転運動に寄与し, 肩甲下筋が大円筋による上腕の内転運動を補助することが示された。
  • 遠藤 秀紀, 吉原 耕一郎, 長谷川 寿一, 吉川 泰弘, 林 良博, 酒井 健夫, 伊藤 琢也, 鯉江 洋, 木村 順平
    2005 年 10 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/11/03
    ジャーナル フリー
    CTスキャンを用いてチンパンジーにおける第一中手骨の把握時の内転運動を検討した。第一中手手根関節を基点に, 第一中手骨は内転し, その骨体は回転していることが非破壊的に確認できた。大菱形骨とその他の手根骨は第一中手骨内転時にも把握に意義あるような運動はしていなかった。第一中手骨の可動範囲は三次元的に見て, 第二中手骨よりも内側に限定されていた。チンパンジーの第一中手骨および第一指骨群は, ヒトといくつかの化石人類と比較して把握運動の機能性に乏しいとされてきたが, 今回のCT断層像は, チンパンジーの第一中手骨の運動と母指対向性が対象物の把握動作のために十分ではない可能性を示した。
  • 福井 大祐, 坂東 元, 小菅 正夫
    2005 年 10 巻 1 号 p. 49-52
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/11/03
    ジャーナル フリー
    飼育下マガンが外傷性膝関節脱臼を呈し, 修復手術を行った。手術では, 外側側副, 前十字および後十字靭帯の断裂を認めた。脱臼を整復後, 非吸収糸を腓腹筋外側頭腱付着部から脛骨結節に作製した骨孔に通して締結し, 関節包と大腿筋膜を縫縮した。術後14日目に負重し始めた。80日目に軽微な変形性関節症を認めたが治療により改善し, 4年後の歩行状態は良好である。ドバト1羽を用いた治療試験でも4年間良好に経過している。
  • 大沼 学, 上野 吉一, 松林 清明
    2005 年 10 巻 1 号 p. 53-55
    発行日: 2005年
    公開日: 2018/11/03
    ジャーナル フリー
    生体内の酸化ストレスを評価する一般的な指標である尿中8-hydroxyguanosine (8-OHdG)量を飼育ニホンザルにおいて定量した。臨床症状を示していない飼育ニホンザルの測定値は6.9to203.2ng/mg creatinineの範囲で, 何らかの臨床症状を示している個体の測定値は150.0 to 291.0ng/mg creatinineの範囲であった。臨床症状を示していない個体の測定値は示している個体の測定値よりも有意に低かった(P<0.05)。今回の研究ではサンプル数が少なく尿中8-OHdG量の異常値については検討できなかった。しかし, 今後ニホンザルにおける尿中8-OHdG量についてデータを蓄積することで, 酸化ストレスを指標とした健康状態の評価方法をニホンザルにおいて実施できる可能性があると考えられた。
症例報告
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