2007 年 12 巻 1 号 p. 71-76
2003年7月に千葉県の動物園において,7歳2カ月齢の雄のトナカイが,数日間軟便を呈した後に急死した。剖検時,肝臓は暗褐色を呈していた。病理組織学的に,肝実質中に変性した好中球の浸潤を伴う小壊死巣が散見され,大量のヘモジデリンを含有するKupffer細胞が多数認められた。肝細胞の細胞質には多数の銅染色陽性顆粒と空胞が認められた。銅の含有量は,肝臓266.6ppm,腎臓21.7ppm,血液197.8μg/dlであり,健康なトナカイおよび羊に比べ明らかに高い値であった。これらの結果より本症例をトナカイの銅中毒と診断した。