抄録
自然史博物館の頭骨標本で三次元デジタル形態学を進めるための手法を提案した。頭骨標本はCTスキャンによって三次元デジタル化され,そのオリジナルデータはサーバーやハードディスクに保管される。そのデータは詳細な形態学的観察や記載に利用できる。頭骨は自由な角度から検討でき,標本の内部構造は頭骨を部分的に切除することで非破壊的に観察することができる。また三次元座標を用いることで,頭蓋の形状と機能を量的に解析することが可能となる。視覚系でいえば,眼窩と視神経の形態に関連する三次元座標を用いて,各動物種を形態学的に比較検討することができる。データは標準化されたDICOMフォーマットのファイルとして蓄積されるが,ソフトウェアによってポリゴンデータにも変換される。そこで,三次元データは以下のような2つの手法によって利用することができる。(1)DICOMフォーマットのボクセルデータからボリュームレンダリングされ,標本の質的な観察に用いられる。(2)DICOMフォーマットのデータからポリゴンデータに変換され,骨計測学やコンピューターグラフィックスや芸術デザインに用いることができる。そしてDICOMデータはインターネットを介して世界中からアクセス可能となる。一連の手法により,今後,標本の三次元データの収集,解析,公開が促進されよう。