日本野生動物医学会誌
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特集論文
日本での野生動物疾病サーベイランス
根上 泰子
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2014 年 19 巻 2 号 p. 41-44

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抄録

本稿では,主に,日本での野生動物衛生問題の背景,全国レベルの野鳥における高病原性鳥インフルエンザのサーベイランスおよび現在行われている関連活動について紹介する。社会学的および生物学的背景から,今までは,日本で野生動物衛生サーベイランスシステムを構築するきっかけや状況が弱かった。しかし,近年のHPAIの発生や新興・再興感染症を引き起こすと考えられる様々な要因を考慮すると,日本においてサーベイランスシステムを構築することは重要である。日本では,2004,2007,2008年にそれぞれHPAIVが野鳥から検出された。これらの背景から,環境省は2008年に野鳥におけるHPAIVサーベイランスのマニュアルを整備し,地方自治体,大学,研究機関,他省庁等と連携し,全国レベルでのサーベイランスを開始した。このサーベイランスはHPAIVを検出するためだけのシステムであるが,このシステムを利用して,野鳥の大量死情報が入手できるため, 2012年5月に国立環境研究所が調査研究の目的で野鳥大量死の受動サーベイランスを開始した。地方自治体が本システムで検出される大量死事例について,鳥インフルエンザ以外の死因調査を希望する場合,国立環境研究所に検体を送付し調査を依頼することができる。国立環境研究所は死因調査を行い,結果を依頼した自治体に報告する仕組みとなっている。野生動物衛生サーベイランスシステムを構築するためには,まず最初に,データベースとネットワークの構築が不可欠である。この活動はシステム構築の第一歩となるだろう。

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© 2014 日本野生動物医学会
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