バンドウイルカの繁殖において,出産日を推定することは出産に向けての準備体制を整え,不測の事故を防ぐために重要である。一般的にバンドウイルカにおいては出産直前に体温の低下が認められ,多くの飼育施設で体温測定による出産日の推定が行われている。一方で,出産1日前でも体温の低下が認められないこともある。本研究では母獣の乳裂間幅が出産直前に拡大することに着目し,水族館における4例の出産を対象として,出産直前の体温および乳裂間幅の変化を記録した。その結果,体温は出産1日前に有意に低下し,乳裂間幅は2日前に有意に拡大した。体温の低下と比較し,乳裂間幅の顕著な拡大は早く確認されたことから,乳裂間幅を測定することで,体温測定のみを実施するよりも早期に出産日を推測できる可能性が示唆された。