日本野生動物医学会誌
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原著
アグーチの消化管
ガルシア G.W.バプチステ Q.S.アドグワ A.O.加国 雅和有嶋 和義牧田 登之
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2000 年 5 巻 1 号 p. 55-66

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抄録

ヨーロッパ人が入る前には南米, 中米およびカリブ海諸国の一部ではアグーチが重要な蛋白資源であった。最近トリニダード・トバゴではアグーチを飼育繁殖して食肉その他として利用するようになっている。飼育に重要な餌付けのために, 消化器官の解剖学的知見が必要であるが, これまでの文献は, 数少なくまた, 胃, 腸など個々の部分について述べているので, 本報では全体を概観して口腔, 食道, 胃, 小腸, 大腸, 各部分の構造と長さおよび相対的重量を記載した。材料はトリニダード島南部のハンターから入手した10頭のアグーチを用いた。現場で採材後凍結し, 解剖はそれを解凍して行った。歯式は1013/(1013)=20で, 犬歯と前臼歯の間隙が広い。食道は長さ15.4cm, 直径0.5cm位で, 胃の長さは平均13.8cmであった。小腸の長さは全体で700±124cmであった。十二指腸と空腸の直径は1.4cmで回腸の直径は0.4cmであった。大腸のなかで特徴的なのは盲腸でその頭部の直径は4.2±0.8cm, 尾部の直径は2.4±0.4cmと太く, 胃よりやや小さい程度で, 盲腸の長さは平均22.5cmであった。結腸の直径は近位部は2.4±0.9cmとやや太いが遠位部は1.3±0.4cmと細くなっており, これは直腸とほぼ同じ太さである。結腸と直腸の長さは117±2.5cm。肛門腺が一対みられ, 長さ1.8〜3.0cm, 幅1.3〜1.8cm, 重さ1.3〜3.5gであった。左側の腺の方が右側よりも重い。アグーチは小腸が長いのが特徴で, 絨毛の密度の比較解剖学の材料に好適である。今後の盲腸, 肛門腺の比較解剖学的研究にも役立つであろう。

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© 2000 日本野生動物医学会
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