日本野生動物医学会誌
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原著
魚食コウモリ(Noctilio leporinus)における消化管内分泌細胞の免疫組織化学的研究
小森 学タデイ V.A.本道 栄一北村 延夫パイ V.D.ホリーク C.N.山田 純三
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2000 年 5 巻 1 号 p. 45-54

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抄録

翼手目は単一の目でありながらその食性は多岐に渡り, 肉食, 昆虫食, 果実食, 花蜜食, 魚食, 吸血食と様々である。本研究では食性と消化管内分泌細胞との関係を明らかにする目的で, 魚食コウモリ(Noctilio leporius)の消化管内分泌細胞の分布と相対的出現頻度を免疫組織化学的方法により検索した。セロトニン細胞は胃腸管の全部位において他の各種陽性細胞より高頻度で認められ, 特に幽門腺部で多数認められた。ソマトスタチン細胞は噴門腺部を除き全部位で認められ, 幽門腺部で高頻度だった。ガストリン細胞は噴門腺部と胃底腺部を除き全部位で認められ, 幽門腺部では非常に多数認められた。モチリン, セクレチン, 胃分泌抑制ポリペプチド細胞は腸管の前部で, ニューロテンシンと腸グルカゴン細胞は腸管の後部に主に分布していた。腸グルカゴン細胞は, 少数であったが胃底腺部にも認められた。また, ソマトスタチンおよびガストリン細胞のみがブルンナー腺でまれに認められた。牛膵ポリペプチド, 鳥膵ポリペプチド, ポリペプチドチロシンチロシン, コレシストキニン細胞は胃腸管の全部位で認められなかった。既に明らかにされている吸血食, 昆虫食, 蜜食, 果実・蜜食のコウモリにおける結果の比較からいくつかの相違点を認めることができた。しかし, それらが消化管内分泌細胞と食性との関係にどのように関わっているのかを指摘するのには, さらに詳細な検索が必要である。

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© 2000 日本野生動物医学会
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