日本野生動物医学会誌
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原著
カイウサギより得たウサギズツキダニの形態について
沖野 哲也後川 潤初鹿 了
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2001 年 6 巻 1 号 p. 15-22

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抄録
岡山県倉敷市内の家庭でペットとして飼育されていたカイウサギOryctolagus cuniculus var. domesticusの体毛に見られた小型のダニについて,その形態を光学顕微鏡と走査電子顕微鏡によって観察した。このダニは,(1)雌虫が長径0.56mm,最大幅径0.25mm,雄虫が長径0.61mm,最大幅径0.33mmで,背腹の体表にしわ状の紋理が認められる。(2)前体部の背側には背部肥厚板があり,腹側には宿主の体毛をつかむ機能をもったフード様の把握器が存在する。(3)雌虫の背部肥厚板には小毛が認められない。(4)4対の歩脚は正常に分節し,各歩脚の末端に内質盤が認められる。(5)第I脚と第II脚の基節条は,前者がY字形,後者がV字形を呈している。(6)雄虫後体部の尾葉突起は切れ込みが深く,各尾葉の先端に基部が膨らむ長い剛毛が1本存在する。(7)雄虫後体部の背側体表には絨毛様の横縞が認められる。(8)雄虫の肛門の両側に円形の肛吸盤が存在する。(9)虫卵は長径0.21mm,短径0.08mmで乳白色を呈し,宿主の体毛に膠着している等の形態的特徴からウサギズツキダニListrophorus gibbus Pagenstecher, 1861と同定された。本稿は,日本におけるL.gibbusの形態をはじめて示したものである。
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© 2001 日本野生動物医学会
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