情報の科学と技術
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名古屋大学における専門分野のデータベース・研究データ調査
直江 千寿子能勢 正仁新堀 淳樹三好 由純堀 智昭端場 純子大平 司我喜屋 累岡本 麻衣子相良 毅
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論文ID: 2024-002

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発表概要

オープンサイエンスの推進には研究データの共有が不可欠であり,分野を超えて研究データを検索・再利用できるような仕組み(メタデータ整備)がますます重要になってきている。しかし,これまで各分野で扱っている研究データの特徴やメタデータの形式(メタデータスキーマ)について調査されたものはほとんどなく,その全容は明らかにされてこなかった。今回,名古屋大学の研究者を対象に調査を実施した。回答者数は221名と少なかったものの,分野を問わず広く研究データが公開・利用されていることと,10を超えるメタデータスキーマが学内で用いられていることが明らかになった。

1. はじめに

オープンサイエンスの推進には研究データの共有が不可欠であり,研究データを検索・再利用可能にする仕組み(メタデータ整備)の重要性が高まっている1)。分野によって研究データやメタデータの形式(メタデータスキーマ)は異なることが知られているが2),その全容についてはまだ明らかにされていない。名古屋大学附属図書館は,専門分野のメタデータを汎用的なメタデータスキーマに変換することを目的とした共同研究に参加している3)。この研究の一環として,専門分野のメタデータスキーマに関する調査を実施した。本発表ではその結果の概要について報告する。

2. 調査概要

名古屋大学の18部局の研究者4,013名を対象にMicrosoft Formsを用いたアンケート調査を2022年12月~2024年1月の間に4回に分けて実施した。本調査における研究データは,NISTEP(文部科学省科学技術・学術政策研究所)の調査「研究データ公開と研究データ管理に関する実態調査2022」4)の定義を用いた。調査項目には,使用しているメタデータスキーマのほか,自身で管理・利用しているデータベースや,研究データの入手・公開状況に関する項目も含めた。

3. 結果・今後の展望

調査の結果,221名から回答があった。そのうち,自身で管理しているデータベースがあると回答した研究者は59名で,その半数以上の回答者がデータの長期保存や管理する人材に課題を感じていると回答があった。

研究データについては,公開経験を有する回答者は約4割で,公開先としては,「学術機関のリポジトリ・データアーカイブ」が最も多く,「個人や研究室のウェブサイト」,「論文の補足資料」が続いていた。一方,公開データの入手経験がある回答者は約6割で,入手先としては,「学術機関のリポジトリ・データアーカイブ」,「論文の補足資料」,「特定分野のリポジトリ・データアーカイブ」の順に多い結果であった。

用いているメタデータスキーマについては,11部局から表1の回答があり,CIF (Crystallographic Information Framework) が最も回答数が多かった。

表1. 専門分野で使用しているメタデータスキーマについて

本調査の回答率が6%にも満たず,専門分野のメタデータスキーマの全容を解明できたとはいえないが,本学では少なくとも10を超えるメタデータスキーマが用いられており,分野を問わず広く研究データが公開・利用されていることを明らかにできた。今後さらに調査を進め,JPCOARスキーマへのメタデータスキーママッピングを様々な分野へ展開していきたい。

参照文献
  • 1)  統合イノベーション戦略推進会議. 公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方. 内閣府, 2021, 18p. https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kokusaiopen/sanko1.pdf, (参照 2024-04-23).
  • 2)  例えば,国立大学図書館協会資料委員会オープンサイエンス小委員会. RDA メタデータ標準カタログ(日本語訳). 国立大学図書館協会, 2022, 567p. https://www.janul.jp/sites/default/files/2022-12/rda_metadata_standards_catalog_ja.pdf, (参照 2024-04-23)では,「分野検索」において各分野で用いられている代表的なメタデータスキーマが参照でき,同じ分野でも多様なメタデータスキーマが利用されていることが確認できる。
  • 3)  我喜屋累. “宇宙科学分野のメタデータスキーマからJPCOARスキーマへのマッピング-他機関・他分野への展開”. 2023年度RDUF公開シンポジウム, 2023-12-04. https://japanlinkcenter.org/rduf/events/index.html#s001, (参照 2024-04-23).
  • 4)  池内有為, 林和弘. 研究データ公開と研究データ管理に関する実態調査2022 :⽇本におけるオープンサイエンスの現状. ⽂部科学省科学技術・学術政策研究所, 2023, NISTEP RESEARCH MATERIAL No. 335, 132p. https://doi.org/10.15108/rm335, (参照 2024-04-23).
 
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