情報の科学と技術
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大阪府済生会中津病院年報のインターネット公開の試み
共同リポジトリKINTOREを利用して 第2報
吉原 理恵中澤 隆
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論文ID: 2024-006

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発表概要

大阪府済生会中津病院(以下,当院)では大阪府済生会中津病院年報(以下,中津年報)を発行している。大学等の紀要論文は機関リポジトリが進み,入手の利便性が高まっているが,病院発行の論文は配布が関係者に限定されることが多く,論文の需要はあるが確実な入手が保障されない現状がある。当院では2017年4月から近畿病院図書室協議会共同リポジトリKINTORE(キントレ)を利用し,中津年報掲載論文の公開を開始した。医学論文検索データベース「医中誌web」等の検索結果と論文がリンクされ,検索結果から論文PDFの入手が可能になり,利便性が飛躍的に向上した。

ダウンロード数を院内にフィードバックすることで,投稿者の励みに繋げ投稿を促すことは社会的な貢献に繋がると考える。

1. はじめに

当院は31の診療科,570床を有する地域の中核病院である。1916(大正5)年に設立され,2016年に創立100年を迎えた。1990年,当時の小児科部長と形成外科部長により,病院の活動記録として1号統計集,病院のアカデミックな面の発展のため,2号論文集を創刊,年に1回計2冊を発刊,2024年3月現在第33巻まで刊行している。

2. 病院発行紀要の状況

大学等の紀要論文はインターネット上に公開する機関リポジトリが進み,入手の利便性が高まっているが,病院発行の論文は配布が関係者に限定されることが多く,論文の需要はあるが確実な入手が保障されない現状がある。近畿図書室協議会では共同リポジトリKINTORE(キントレ)を2016年1月より開設,会員施設の職員の成果物を国内外に公開している。

3. 中津年報のインターネット公開について

中津年報掲載論文の利用促進や掲載論文のアクセス利便性の向上のため,2017年4月,中津年報第26巻2号からリポジトリを利用し,論文公開を開始した。医学論文検索データベース「医中誌web」等の検索結果と論文がリンクされ,検索結果から論文PDFの入手が可能になり,飛躍的に利便性が向上した。

4. リポジトリ公開後の状況

リポジトリ公開後の利用状況は,2024年2月までの8年間で登録論文は109件,総ダウンロード数は182,527件,月平均のダウンロード数は2,199件となった。投稿者の職種の内訳は医師67件(61%),看護師25件(23%),事務11件(10%),メディカルスタッフ(理学療法士,栄養士,歯科衛生士等)7件(6%)となった。職種別のダウンロード数内訳は医師113,073件(62%),看護師51,187件(28%),メディカルスタッフ12,022件(7%),事務6,245件(3%),となった。ダウンロード数の上位10位は表1の通り。

表1

5. おわりに

中津年報掲載論文をリポジトリに公開し,期待を超える論文のダウンロードがあった。看護師による登録論文数は全体の23%だが,ダウンロード数の上位10位中,4件が看護師の論文であり,総ダウンロード数の3割弱を占め,人気がある。臨床に携わる看護師の論文はニーズがあるといえる。

当院年報の論文が多くの研究者に利用されることは,社会的に意義があるのではないか。ダウンロード数を院内にフィードバックすることで,投稿者の励みに繋げ,投稿を促すことは社会的な貢献に繋がると考える。

参照文献
  • 1)  増田徹.病院図書館と機関リポジトリ.病院図書館.2013;33(1);36-40.
  • 2)  天野いずみ.赤十字リポジトリの導入の目的と運営状況.医学図書館.2015;62(1):44-50.
  • 3)  藤原純子,他.共同リポジトリ開設への第一歩―機関リポジトリプロジェクトチームの活動―.病院図書館.2016;35(1);27-33.
 
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