関西医科大学雑誌
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日本人の軽症先天性水腎症の自然経過と経過観察法の提案
髙畑 枝理子木全 貴久辻 章志大橋 敦金子 一成
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2021 年 72 巻 p. 29-33

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抄録

先天性水腎症(congenital hydronephrosis: CH)は最も多い先天性腎尿路異常であるが,統一された診断基準がないため,その正確な頻度は明らかでない.また軽症例は自然軽快するとされているが,ほとんどが後方視的研究で,軽症CHの長期予後を前方視的に検討した報告はない.そこで筆者らは,日本人新生児の生後1か月時におけるCHの頻度を調査するとともに,生後1か月時に発見された軽症CHの自然経過を明らかにする目的で前方視的に検討を行った.その結果,生後1か月児の1,009人を対象に,CHの頻度は100例118腎(9.9%)であった.そのうちSFU1度が87腎(74%),SFU2度が30腎(25%),SFU3度が1腎(1%)およびSFU4度が0腎であった.またSFU(society for fetal urology)分類で1度または2度の軽症CHのうち,1度のCHは1年で90%,2年で99%が自然軽快し,2度のCHは1年で32%,2年で60%が自然軽快した.したがってSFU1度は症状を認めなければ以降のフォローは必要なく,SFU2度は1年ごとに腹部超音波検査で再検し,方針を決定すれば良いと思われた.

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