関西医科大学雑誌
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血小板機能阻害剤,特にca2+調節に関与する薬剤の血小板リン脂質代謝と細胞内Ca2+動態に及ぼす影響についての検討
北田 親穂
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1992 年 44 巻 4 号 p. 229-245

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抄録

血小板機能抑制を目的として用いられている各種阻害剤,特にCa2+移動や利用を抑制するとされている薬剤を中心に,その血小板内脂質代謝,Ca2+動態に及ぼす影響について検討した.
Aequorin漁負荷血小板をもちいた実験において,Ca2+チャンネル阻害剤のVerapamii,細胞内Ca2+拮抗剤のTMB-8,カルモデュリン阻害剤のW-7はいずれも低濃度thrombin刺激による細胞内Ca2+濃度の増加を抑制した0しかし,Verapamil,TMB-8が本来作用する部位と考えられている細胞外液からのCa2+流入や,細胞内Ca2+動員に及ぼす特異的な阻害効果は明らかでなかった.むしろ,Ca2+増加を引き起こすmediator,主としてThromboxane A2(TxA2)の産生に影響する可能性が推察された.
14C-アラキドン酸で標識した血小板をthrombin刺激した場合,上清中にアラキドン酸が遊離してくるが,これらの薬剤艀置によりアラキドン酸遊離は抑制された.しかし,アラキドン酸からTxA2への転換には影響を及ぼさなかった.
従って,これらの薬剤は低濃度thrombin刺激時,膜リン脂質からのアラキドン酸遊離を抑制することによってTxA2の産生を障害し,その結果として細胞内Ca2+濃度増加を阻害するものと考えられた.
また,cAMP系血小板機能阻害剤は,thrombin刺激による血小板内Ca2+濃度の増加を著明に抑制したが,これもCa2+移動への直接的影響の他に,イノシトールリン脂質代謝回転への抑制が関与していた.
以上より,血小板内Ca2+動態の実験的検討時にaCa2+に対する調節効果を想定してこれらの薬剤を使用する際には,付随したリン脂質代謝への効果による影響を考慮する必要があるものと思われた.

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