関西医科大学雑誌
Online ISSN : 2185-3851
Print ISSN : 0022-8400
ISSN-L : 0022-8400
維持血液透析患者における血液レオロジーと微小循環動態についての研究
ヒト遺伝子組み換えエリスロポエチン投与による影響を中心に
藤吉 庸雅
著者情報
ジャーナル フリー

1992 年 44 巻 4 号 p. 314-330

詳細
抄録

二維持血液透析中の慢性腎不全患者に対する腎性貧血の治療にrecombinant human erythrapoietin(rHuEPO)が導入され,著明な効果をあげている.しかし,症例の蓄積とともに,貧血の改善が見られる症例の中に,血栓症や高血圧などの副作用が報告されるようになった.そこで,それら副作用にまつわる血液レオロジー因子の影響が注目されている.本研究では貧血治療時に経時的に血液粘度,赤血球変形能などの血液レオロジー因子を測定すると同時に,生体顕微鏡によって眼球結膜細静脈を主とした微小循環動態への影響を検討した.さらに透析前後の比較,健常者との比較などを加え,貧血治療の指標となる至適ヘマトクリット値(Ht)を明らかにした.維持血液透析患者21名を対象とし,rHuEPO投与により,Htが25%,30%,35%に到達した3群に分類し,それぞれの投与前と比較検討した.血液粘度は3群ども有意な増加を示しyHt35%以上の群では健常者より高値を示した0眼球結膜細静脈の血管内径は各群で増加したが,血流速度,血流量に有意変化はみられなかった0しかし,Ht30%以上になると血管内赤血球集合やスラッジなどの血行動態の悪化がみられた.筒井らは運動能力はHt 27-28%で改善されるとし,JohnsonらはrHuEFOによる脳血流量の低下を報告している.以上より,rHuEPO投与に際しHt30%を超えないことが望ましい.また透析終了直後は急激なHtの上昇により微小循環動態が悪化しているため,注意が必要である.

著者関連情報
© 関西医科大学医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top