関西医科大学雑誌
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パーキンソン病の微小循環動態と血液レオロジーについて
玉井 敏弘
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1992 年 44 巻 4 号 p. 294-313

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抄録

(目的)パーキンソン病の微小循環動態と血液レオロジーに関する報告はなく興味ある点であり,ここを知る目的で本研究を行った.
(対象)パーキンソン(病患者54名,症候性パーキンソン病患者30名(以下P群)を他の疾患と比較し,薬物に対する反応性も検討した。眼球結膜微小循環動態の観察は生体ビデオ顕微鏡システムを用い,眼球結膜細静脈の内径,血流速度をモニター上で測定し血流量を算出した.血液レオロジーの測定は回転粘度計を用い,赤血球変形能の測定はNuclepore membre法を用いた.
結果)1)P群の細静脈血流量は,(Caz+拮抗剤で21.8%増加した.この事実は脳内の微小循環動態の改善を示唆していた.一方,β 遮断剤で約22.4%減少した.2)β 遮断剤に対するP群の全血粘度は低下した.3)P群の細静脈血流量は,駆疹血剤に対して変化しなかった.
(考察)1)脳内血管障害で発症する症候性パーキンソン病に塩酸ニカルジピンが有効である可能性が推測された.2)Ca2+拮抗剤とβ遮断剤で振戦は抑制されたが脳内血流量は全く反対の現象を示した.このことは両薬物の抗振戦作用が中枢でなく末梢に作用する可能性があると考えられた.3)P群の微小循環動態は,癖血証患者群が血液のうっ滞状態が改善するのと異なり駆瘍血剤に対して全く反応しなかった.これは,自律神経障害により血管反応性が低下し,組織内からの水の移動のないのが原因と推測された.

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