抄録
コロナ禍は、海外からの留学生の生活に大きな影響を及ぼしたが、人と人とのつながりが希薄になり、外出が難しかった状況においても、留学生たちは探索的なフィールドワークを通じて、人や社会とつながり、学ぶことを続けていた。本稿は筆者が担当した留学生向けのフィールドワーク科目において、留学生たちが実施した4つのフィールドワークを分析し、①留学生がどのような角度からコロナ禍の社会の調査をしたのか、②コロナ禍でどのように人々と関わったのか、③コロナ禍のフィールドワークの実践を通じて何を学んだのか、また、どのような自分自身の変化を感じたのかを明らかにした。そして最後に留学生たちのコロナ禍でのフィールドワークが、社会的な境界線越えの模索としてどのような意味があるのかを検討した。本稿の分析はコロナ禍の留学生の経験を分析した3つのプロジェクトの1つであり、本号に掲載されている留学生のアンケート調査(村田 2022a)、留学生による経験の言語化とソーシャルネットワークの分析(村田 2022b)とともに、コロナ禍での留学生の多様な経験と学びを明らかにする試みとして行った。