日本地すべり学会誌
Online ISSN : 1882-0034
Print ISSN : 1348-3986
ISSN-L : 1348-3986
研究ノート
大規模地すべりダムを形成した2010年パキスタン・フンザ・アッタバード地すべり
-ALOS/PRISM画像判読による前兆現象の観察と現地調査結果-
八木 浩司丸井 英明Allahbuksh KausarShablis Sherwali
著者情報
ジャーナル フリー

2010 年 47 巻 6 号 p. 335-340

詳細
抄録
パキスタン北部を流れるフンザ川右岸のアッタバードにおいて2010年1月初旬に幅1000m, 比高1000m, 斜面長1500mの規模で地すべりが発生し, 約4000万立方mの移動土塊がフンザ川河谷をせき止めた。移動体は, 青灰色細粒物質をマトリックスとした長軸方向で3-4mから10mに及ぶような岩屑層からなり, この移動体からさらに絞り出された細粒物質が地すべりマウンド上を泥流となって下流側や上流側に流れ下った。本地すべりによる犠牲者は死者19人で, そのすべてはこの泥流に巻き込まれたことによるものである。この地すべりダムは大きな岩屑層からなるため突然決壊の危険性は低いと考えられた。災害4ヶ月前に撮影されたALOS/PRISM画像の実体判読の結果, 谷壁斜面には前兆現象的な変位が認められた。このためヒマラヤなどの高起伏地域での河道閉塞を引き起こす大規模地すべりの事前把握のための衛星画像利用の可能性が示唆された。
著者関連情報
© 2010 公益社団法人 日本地すべり学会
前の記事 次の記事
feedback
Top