日本地すべり学会誌
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論文
青森県西部地域の地すべりの地質的特徴と鉱物学的検討からみた熱水変質帯とすべり面の関係
中村 智行柴 正敏檜垣 大助
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2021 年 58 巻 3 号 p. 95-108

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抄録

 青森県西部地域には地すべり地形が多発し, 新第三紀のものが全体の82.7%を占め, 特に, 新第三紀中期中新世~鮮新世の堆積岩類が33.4%を占める。これらの堆積岩類を基岩とする「温湯地すべり地域 (軽石凝灰岩)」と「岩崎地すべり地域 (黒色泥岩)」のボーリングコアの鉱物分析を深度ごとに行い, 過去の研究に基づき深度ごとの「熱水変質帯」を区分し, すべり面との関係を考察した。すると, すべり面を含む移動体は, ともにスメクタイト, クリストバライトおよびハロイサイトで特徴づけられる熱水変質帯 (Ⅰ帯 : クリストバライト-スメクタイト帯) に位置することから, 鉱物の組合せからすべり面を判定できる可能性を示している。また, 低温の熱水変質作用による多量のスメクタイトの存在が, 地すべりの発生しやすい素因となったものと考えられる。さらに, 本地域の新第三紀の地すべりにおいても, グリーンタフ変動にともなう低温の熱水変質を広域に受けていると推測され, このことが本地域で地すべりが多発している要因といえる。

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