地すべり
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地下水検層について
その (1) 問題点と理論解
申 潤植
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1976 年 13 巻 3 号 p. 16-21_1

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抄録

孔井水を食塩水等の電解質溶液で置きかえ, 流入してくる地下水による水比抵抗の増加から地下水の流動区間を検出するいわゆる地下水検層法は, 渡・藤田ら土研グループによって開発され, それに関連した実験的研究も発表されている。電気検層・SP検層等とは異なり, 地下水の流動を直接に検知できる点ですぐれており, 地すべり調査等において広く用いられているゆえんである。
ただし, この検層によって検出されなかった区間をもっていきなり非地下水流動区間と判断し得ない事情もあり, この点を含めたいくつかの問題点を提示した。さらに, 流入地下水による孔内食塩水濃度の減少・上下層からの拡散による濃度の一部回復・流入地下水の比抵抗の3つを考慮した微分方程式を導き, つぎの理論式を得た。すなわち, 流入地下水の量と比抵抗をq, ρw, t=0およびt=tにおける孔内水比抵抗をρ0, ρ, 地下水流動区間の水柱体積をV, 拡散速度に関係する係数をTとして,(1-ρ0/ρ) / (1-ρ0/ρw) =q/ (q+T) / (1-e- (1/v) (q+T) t) で与えられる。観測値として既知である左辺およびVの値を用いて9およびTが求められるわけであるが, 図式的な解析を容易ならしめるべく, 標準曲線 (5 (u) 曲線) を作成して併せて示しておく。
地下水検層は, 地すべり地等での地下水の直接的検出方法としてすぐれている。この方法に関するいくつかの問題点を指摘するとともに, 流入地下水による孔内食塩水濃度の減少・上下層からの拡散による濃度の一部回復・流入地下水の比抵抗の3つを考慮した理論式を導き, その解を得た。与えられた孔内水頭のもとでの流地下水の量q, 地層水の圧力水頭の大きさと関係する拡散速度係数Tが, 孔内水比抵抗変化の観測データから入容易に定量的に求められる。なお, 解析計算を一層便ならしめるべく, 上式に関する標準曲線を作成して併せて示しておく。これにより図式的解析が可能となり, これをs (u) 曲線と名づける。

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© 社団法人日本地すべり学会
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