2000 年 37 巻 2 号 p. 48-54_1
1997年7月10日, 鹿児島県出水市で発生した土石流災害は斜面崩壊が元凶であり, 前日までの大量降雨が遠因と考えられた。しかし降雨量は極度な異常値ではなく, 地質的な素因としての断層の存在を指摘した。断層はリニアメントにも表れ, 水俣南断層群の存在が確認された。断層は正断層であり, 過去の崩積土が今回の斜面崩壊部分に合致していた。しかし最近の断層は横ずれであることが条線から確認された。電気探査からも断層は確認され, 地下水のダムアップをさせる構造になっていた。極度な異常値でもない降雨で斜面崩壊が起きたことは, 鹿児島県北西部地震で断層部分が緩んでいたとの推測も否定できない。