日本地すべり学会誌
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異なる林相及び森林伐採状況における樹木地上荷重の斜面安定に及ぼす影響
久保田 哲也大村 寛奥村 武信多田 泰之パウデル プレムプラサド
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2004 年 41 巻 3 号 p. 273-281

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抄録

森林斜面の崩壊・地すべりに対する安定性や対策を考える際, 環境面に与える影響を極力抑える目的で, 森林を保全しながら斜面安定を図る手法, あるいは, 森林を積極的に利用するグリーンベルト構想のような手法が増加している。従って, 森林の斜面安定に与える影響を評価することが重要となっており, 根系の斜面補強効果などの研究に進展が見られる。すべり面がある程度深い場合などには, これら根系の影響は無視できるが, そのような場合に森林地上部荷重 (樹木地上部荷重) が及ぼす影響についてはまとまった研究が少ない。ここでは, 実斜面および実際の林分に関して, 異なった林相・伐採条件を仮定した安定解析を用い, 斜面安定に対する森林地上部の影響について検討した。
主な結果は次の3点である。 (1) 森林地上部荷重によるFSの減少は, 最大でも無森林時の3~4%にとどまる。しかし, 安全率があまり大きくない場合には, 森林地上部荷重を無視すると, 安全率を過大に見積もる可能性がある。 (2) 森林地上部荷重を取り除くことを目的とした森林伐採方式の差については, 斜面上方半分 (面積率50%) の伐採をすれば, 100%伐採した場合と同じ斜面安定効果が生じるケースが見られた。 (3) 森林地上部荷重の影響は, 無地震時と比べて地震時の方が小さくなった。

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