日本下肢救済・足病学会誌
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総説
重症下肢虚血に対する血行再建術
横井 宏佳
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2018 年 10 巻 3 号 p. 107-116

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抄録

重症下肢虚血(CLI:Critical Limb Ischemia)は客観的に証明された動脈閉塞性疾患に起因する慢性虚血性安静時疼痛,潰瘍,壊疽を有し,治療されなければ下肢切断にいたる病態とされる.CLI患者の予後は多くの全身疾患や糖尿病・慢性腎臓病を合併しており不良であり,死亡率は10%/年,下肢切断率は25-45%/年といわれている.CLIに対する治療は薬物療法や運動療法は無効であり,まず血行再建による下肢血流の改善を考えなければならない.CLI症例ではinflowである腸骨動脈よりも,outflowである浅大腿動脈領域,膝下動脈に病変を有することが多い.安静時疼痛のみで,組織欠損のない症例ではinflowの血行再建のみで症状は改善することもあるが,組織欠損がある症例では下腿動脈も含めた完全血行再建が必要となる.血行再建の方法として外科的バイパス手術と血管内治療があげられるが,全身麻酔のリスク因子,感染症の程度や腎機能などの患者背景因子や,病変区域,閉塞の有無,病変長,石灰化の程度,末梢run-off,良質な静脈の有無などの病変因子を把握し,それぞれの治療法のRisk/Benefitバランスを考慮して患者に最も有効かつ安全な血行再建術を選択することが必要である.

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© 2018 日本下肢救済・足病学会
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