日本下肢救済・足病学会誌
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10 巻, 3 号
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会告
巻頭言
総説
  • 横井 宏佳
    原稿種別: 総説
    2018 年10 巻3 号 p. 107-116
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/26
    ジャーナル 認証あり
    重症下肢虚血(CLI:Critical Limb Ischemia)は客観的に証明された動脈閉塞性疾患に起因する慢性虚血性安静時疼痛,潰瘍,壊疽を有し,治療されなければ下肢切断にいたる病態とされる.CLI患者の予後は多くの全身疾患や糖尿病・慢性腎臓病を合併しており不良であり,死亡率は10%/年,下肢切断率は25-45%/年といわれている.CLIに対する治療は薬物療法や運動療法は無効であり,まず血行再建による下肢血流の改善を考えなければならない.CLI症例ではinflowである腸骨動脈よりも,outflowである浅大腿動脈領域,膝下動脈に病変を有することが多い.安静時疼痛のみで,組織欠損のない症例ではinflowの血行再建のみで症状は改善することもあるが,組織欠損がある症例では下腿動脈も含めた完全血行再建が必要となる.血行再建の方法として外科的バイパス手術と血管内治療があげられるが,全身麻酔のリスク因子,感染症の程度や腎機能などの患者背景因子や,病変区域,閉塞の有無,病変長,石灰化の程度,末梢run-off,良質な静脈の有無などの病変因子を把握し,それぞれの治療法のRisk/Benefitバランスを考慮して患者に最も有効かつ安全な血行再建術を選択することが必要である.
  • 内田 恒, 奥田 紘子, 吉田 博希
    原稿種別: 総説
    2018 年10 巻3 号 p. 117-125
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/26
    ジャーナル 認証あり
    最近のCLIはほとんどが糖尿病を背景としており,潰瘍形成の病態をよく理解し治療法を選択する必要がある.血管病変は下腿動脈病変が中心で,3.5mm径以上の良好な1本の静脈によるバイパスが可能であれば大量の血流供給,長期開存性が見込めるため外科的血行再建の役割は大きい.一方,全身動脈硬化症を有するハイリスク集団であり,到達目標を正しく定め,EVT,外科的治療を有効に選択していくことが重要となる.最近本邦で報告されたSPINACH STUDYでは,WIfI分類W-3,fI2-3,足部小切断後など組織障害の大きい例では,はじめから外科的治療が推奨される結果であった.多様な全身状態・局所病態に対応する治療戦略はまだ確立しておらず,新しいWIfI分類などを上手く活用し,他診療科,他職種との共通認識を深めることにより新たな治療戦略が構築されていくことが望まれる.
特集:重症虚血肢に対する血管内治療
  • 福永 匡史, 川﨑 大三
    原稿種別: 特集:重症虚血肢に対する血管内治療
    2018 年10 巻3 号 p. 126-130
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/26
    ジャーナル 認証あり
    重症虚血肢患者に対する創傷治療において,完全治癒を得るまでには長期間必要になり複数回のカテーテル治療が必要になる.創傷治癒を得るために早期に再血行再建術を繰り返すPlaned-endovascular-therapy(Planed-EVT)が創傷治癒期間を短縮すると考え検討を行った.2013年1月から2015年12月までに下肢動脈に対して2回以上の血管内治療を必要とした組織欠損を有する52肢(従来治療群)と,2016年1月から2016年10月までに同様に治療された37肢(Planed-EVT群)を本研究に登録した.従来治療群は皮膚還流圧の低下,創傷治癒遅延を認めた際に再血行再建術を行い,Planed-EVT群は2ヵ月ごとに傷が治癒するまで再血行再建術を行った.両群における創傷治癒率および治癒期間を評価した.両群の総血管内治療回数差は認めなかった.創傷治癒率も両群間に差は認めなかったが(従来群vs Planed-EVT群;71.2%versus 73.0%,p=1.0),創傷治癒期間はPlaned-EVT群において有意に短くなった(95日versus 143日,p=0.025).Planed-EVTは創傷治癒期間を短縮できる効果的な治療と考える.
  • 山本 義人
    原稿種別: 特集:重症虚血肢に対する血管内治療
    2018 年10 巻3 号 p. 131-142
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/26
    ジャーナル 認証あり
    近年,大腿膝窩動脈領域の血管内治療は大きく変わりつつある.すでに慢性完全閉塞を含めた初期成功率はほぼ100%に近づいており,いかに長期開存を維持するかが課題となっている.新たに登場した薬剤溶出ステント,薬剤溶出バルーン,VIABAHN®がこの期待に応えるためには,適切なvessel preparation=解離をコントロールしつつ十分な前拡張を得ることが重要となる.Vessel preparationに用いるデバイスとして種々のdebulking deviceが欧米では使用されており,debulking+new deviceによる治療成績が評価されつつある.現時点で本邦で使用可能なvessel preparation deviceはscoring balloonのみであるが,これらを用いて十分な前拡張を行うことで,より大きな内腔を得つつ,解離を最小限に抑え,長期成績の改善につながっていくことが期待される.
  • 丹 通直, 浦澤 一史
    原稿種別: 特集:重症虚血肢に対する血管内治療
    2018 年10 巻3 号 p. 143-151
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/26
    ジャーナル 認証あり
    末梢動脈疾患(Peripheral Artery Disease: PAD)は今後増加の一途をたどると予想されている.そのなかで特に重症虚血肢(Critical Limb Ischemia: CLI)を有する患者の予後は不良であり,救肢には集学的治療が非常に重要である.PADの治療は症状の程度(間歇性跛行かCLIか)や,その病変の部位により治療法が異なっており,患者本人そしてその社会的背景を考慮したうえで,薬物療法,血管内治療(Endovascular therapy: EVT)および外科的手術による血行再建,リハビリテーションを含めた治療方針を選択し,決定することが重要かつ必須となる疾患である.本邦では海外と比較し,EVTにおいて使用できるデバイスが限られており,手技成功を得るためにさまざまな工夫がなされてきた.本稿では膝下動脈病変に対するEVTの現状と初期成功を得るための技術およびデバイスについて概説する.
  • 金子 喜仁
    原稿種別: 特集:重症虚血肢に対する血管内治療
    2018 年10 巻3 号 p. 152-159
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/26
    ジャーナル 認証あり
    末梢動脈疾患(peripheral arterial disease; PAD)に対する血行再建は,長年バイパス術(bypass surgery; BSX)が主であった.しかし技術の進歩・デバイスの進化に伴い,今や血管内治療(endovascular therapy; EVT)がBSXを凌駕している.それは,重症虚血肢(critical limb ischemia; CLI)でも同様である.特に,冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI)を生業としていた循環器科医がEVTを行う機会が増えている.長年PCIで培った技術を生かせるが,PADへの理解がいまだ十分とはいえない.そもそも,PCIは薬剤溶出型ステントにより再狭窄の問題は改善され,今や確立した治療となった.しかしEVTは,一部領域をのぞけば再狭窄が未解決であり,適応や戦略の慎重な検討が必要である.特に,膝下動脈(below the knee; BTK)に対するEVTの成績は不良であり治療後3ヵ月で70%以上が再狭窄・再閉塞すると報告されている1).CLI治療のゴールは第一に安静時痛の改善・創傷治癒であり,PCIと同じスタンスで治療を行ってはならない.本稿では「適切な」BTKに対するEVTついて,筆者の考えを述べたい.
  • 仲間 達也, 柴田 剛徳, 緒方 健二, 小船井 光太郎, 渡辺 弘之
    原稿種別: 特集:重症虚血肢に対する血管内治療
    2018 年10 巻3 号 p. 160-167
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/26
    ジャーナル 認証あり
    2017年に発表された,ヨーロッパ心臓病学会(ESC)とヨーロッパ血管外科学会(ESVS)の合同ガイドラインでは,血管内治療(EVT)が重症下肢虚血(Critical limbs ischemia: CLI)患者に対する標準治療の一つとして明記された.以前はタブーとも言われていた治療が,標準的治療としてガイドラインに掲載される.これは非常に喜ばしいことであると思う.そのなかで,われわれの前に立ちはだかる最後の障壁が,足首以下(Below-the-ankle: BTA)病変の存在である.BTA病変がCLI患者のアウトカムを悪化させるという報告は多数あるが,EVTでの介入,すなわちBTA interventionがそれを改善させるかはまだ明らかではない.われわれの挑戦から,BTA interventionの意義,適応を明らかにし,治療手技を標準化していくことは,本邦の血管内治療医の責務であると,筆者は考えている.
下肢救済-私たちの取り組み(13)
  • 小谷 祐介
    原稿種別: 下肢救済-私たちの取り組み(13)
    2018 年10 巻3 号 p. 168-172
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/26
    ジャーナル 認証あり
    近年日本は高齢化社会への道をたどり続けている.それに伴い動脈硬化に起因する末梢動脈疾患(peripheral arterial disease: PAD)や,生活習慣病の一つである糖尿病による足病変が急増しており,それらが重症化することにより重症下肢虚血(CLI)や下肢切断などの経過をたどる患者が増加している.当院においてもそのような下肢動脈疾患をもつ患者に対するカテーテル治療を行い下肢の救済を行っている.当院は足治療に特化したカテーテル室(以下カテ室)があり,さまざまな治療方法やデバイスが存在し,それらを組み合わせて治療を行っている.今回当院カテ室やCLI患者を取り巻くコメディカルスタッフのCLI患者治療への独自の取り組みを紹介する.
治療上の工夫
  • 岩﨑 祐子, 小林 直美, 笠井 健一, 乗替 寿浩, 安田 考志, 神谷 匡昭, 岡田 博史, 小山田 裕一
    原稿種別: 治療上の工夫
    2018 年10 巻3 号 p. 173-178
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/26
    ジャーナル 認証あり
    当院では足病ラウンドチームが主体となり,入院患者に対する足病スクリーニングを看護師が行える体制を構築,灌流指標を用い2015年9月から2016年9月の間に1095名に対し足病スクリーニングを行った.このチームと体制を構築するにあたり,チームSTEPPSで用いられるJ.P.コッターの改革への8ステップを活用した.チームが院内で認知されコミットメントをあげていくために重要なのは「ステップ1:危機意識を高め共有する,2:改革推進チームをつくる」である.そこで医師を含めた多職種チームを形成し,小さな成功体験の積み重ね,院内外へのデータの提示など,変革の手を緩めない信念で活動を進めている.当院での灌流指標を用いた足病スクリーニングを核として,足病にかかわる診療体制の整備,集学的医療体制が構築されつつある.今回チームビルディングにおける経緯と具体的方法を報告する.
調査報告
  • 林 久恵, 河辺 信秀, 河野 健一, 平木 幸治, 松本 大輔, 森 耕平, 井垣 誠, 野村 卓生
    原稿種別: 調査報告
    2018 年10 巻3 号 p. 179-185
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/11/26
    ジャーナル 認証あり
    日本糖尿病理学療法学会会員4,680名(2016年12月末日の時点)を対象にWebアンケートにて下肢慢性創傷(糖尿病足病変含む)の診療へのかかわりについて調査を行った.有効回答1,363件の内,下肢慢性創傷に対する理学療法実施率は498件(36.5%)であり,実施率が50%を上回っていた診療科は血管外科・心臓血管外科・形成外科・腎臓内科であった.理学療法内容は,糖尿病足病変のリスク評価や介入の実施率が高く,足底圧や下肢虚血等足部創傷の管理に必要な項目は実施率が低かった.理学療法士が診療にかかわっていない理由は「医師の処方がない」,「医師,看護師に任せている」,「足病変の病態を理解していない」の順で多かった.下肢切断リスクの高い患者が集まる診療科では理学療法実施率が相対的に高いことが確認できた.今後は実施率の向上に向け,下肢慢性創傷の診療に参画するための連携体制の構築や理学療法士の知識・技術の向上が必要であると考える.
地方会抄録
編集後記
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