抄録
重症下肢虚血(critical limb ischemia; CLI)の感染に対して,当院では経験的抗生剤療法としてメロペネム(Meropenem; MEPM)とバンコマイシン(Vancomycin; VCM)の併用(MV)療法を施行している.今回,MV療法の有効性を評価した.当院フットカンファレンスで対象となった感染合併CLI症例のうち,MV療法群17例,MV療法以外の抗生剤治療群(control群)23例を用いて,Retrospective cohort studyを行った.感染合併による入院から1年間の下肢大切断回避率(救肢率)を主要評価項目として比較した.救肢率はMV群が88%,control群が57%であり,MV群が有意に高かった(p=0.03).また,Rutherford分類5,6群別に救肢率を評価した結果,Rutherford分類5群のみにMV療法の有効性が認められた(p=0.049).しかし,MV群とcontrol群における1年生存率に有意差は認められなかった(p=0.69).今回の結果から,感染合併CLI症例において,MV療法は経験的抗生剤療法として,下肢大切断を回避するために有用であると考えられた.