軽金属溶接
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純アルミニウムとCFRPの摩擦攪拌接合におけるシランカップリング処理の影響
長岡 亨平野 寛木元 慶久武内 孝山田 浩二森貞 好昭藤井 英俊
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2022 年 60 巻 Supplement 号 p. 8-13

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抄録

 自動車の電動化,自動運転等の推進により,新たな電子部品を搭載することが必要となり,自動車の軽量化技術の開発がますます重要となっている.高強度の高張力鋼板やアルミニウム合金が適用されるとともに,樹脂中に炭素繊維を配合し樹脂の軽量性と炭素繊維の高強度,高弾性の特徴を併せ持つ炭素繊維強化プラスチック(CFRP)が注目されている.金属材料のみならず樹脂材料を適材適所で使用するマルチマテリアル化構造体の実現のためには,金属材料と樹脂材料の異材接合技術は不可欠となっている.

 金属とCFRPとの接合法としては接着剤による接着,ボルトやリベットなどによる機械的締結が利用されている1)∼4).しかし,接着剤は接合に長時間を要するなどの課題があり,機械的締結では締結金具が高コストになるという問題がある.そのため,近年では金属と熱可塑性樹脂を短時間で強固に接合することができる融着法が種々検討されている.射出成形による接合5),6)は携帯情報端末の分野で利用され,自動車部品への応用も期待されている.そのほか,金型を必要とせずサイズの制限を受けない接合技術としては,レーザ溶接7)∼13),超音波溶接14),摩擦攪拌スポット溶接15),16),および摩擦攪拌接合17)∼25)等の手法が挙げられる.これらの融着法による接合では,接合前の表面処理が接合強度に影響する.これまでに表面処理法として,アンカー効果を利用するための表面への凹凸の形成13),金属表面へのシランカップリング処理21),22),アルミニウム合金へのアルマイト処理23),24),ならびに樹脂へのコロナ放電処理25)等が検討されている.

 本研究では,ツールから荷重を付与することができるとともに,比較的長い距離を接合可能な摩擦攪拌接合に着目した.永塚ら17)は,A5052合金とCFRPの摩擦攪拌接合によって健全な継手が得られることを報告している.接合界面にMgOが形成されることで接合が可能になることを明らかにしている.また,永塚ら21)はA5052合金表面にアミン系シランカップリング剤を用いて前処理を施した後に摩擦攪拌接合を行うことで,シランカップリング剤とMgOが反応しA5052合金とCFRPの良好な継手が得られることを報告している.一方で,摩擦攪拌接合における純アルミニウムに対するシランカップリング剤の効果については不明な点が多いため,A1050純アルミニウムと熱可塑性樹脂の一つであるポリアミド(PA6)と炭素繊維からなるCFRPを用いた摩擦攪拌接合を行った.A1050への接合前処理としてエポキシ系シランカップリング剤を用いた前処理とアンカー効果が期待できる研磨処理の影響について検討した.

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© 2022 一般社団法人 軽金属溶接協会
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