2024 年 15 巻 6 号 p. 914-922
はじめに:腰部脊柱管狭窄症(LSS)はロコモの主な原因疾患であるが,治療介入を検討すべきロコモ度3を対象とした手術成績や術後のロコモ度改善に関わる因子についての報告は十分でない.本研究では術前ロコモ度3を対象にロコモなどの運動機能を含む手術成績,術後のロコモ度改善に関わる因子に関して,術前の運動機能,フレイル,サルコペニア,栄養指標などを含め多面的に検討した.
対象と方法:2016年1月から2021年4月における当科のLSS手術例のうち,術前ロコモ度3であった118例を対象とした.術後1年でロコモ度および運動機能が改善するか検討し,さらに術後1年時のロコモ度改善の有無で2群に分け,ロコモ度改善に関わる術前の因子について単変量および多変量解析で検討した.
結果:術後1年で有意にJOABPEQだけでなく,体幹筋力,歩行速度などの運動機能が改善し,64例(54%)でロコモ度の改善が得られた.多変量解析の結果,ロコモ度を阻害する因子は片脚立位時間低値,歩行速度低下(1 m/s未満),馬尾障害型,腰椎手術歴であった.
結語:術前ロコモ度3のLSSにおける術後ロコモ度改善を阻害する術前因子は片脚立位時間低値,歩行速度低下(1 m/s未満),馬尾障害型,腰椎手術歴であった.