2009 年 17 巻 1 号 p. 3-23
本研究では,日本企業の実質活動による報告利益管理の検証を行った.2000年以降,会計ビッグ・バンの影響により,日本企業は変更された会計基準への対応を強いられた。本研究は,先行研究と同様に,営業キャッシュ・フロー,発生項目,裁量的支出及び生産コストに焦点を当てて分析を行った。分析の結果,対象企業は裁量的支出の削減を行うのと同時に,大量生産によりコストを低減させることにより,利益数値を作り上げることが確認できた。同時に,対象企業は,発生項目により利益数値を引き下げることも確認でき,対象企業が報告利益管理を行う動機がさらに強まったと考えられる。本研究における分析結果を総合すると,対象企業は実質活動による報告利益管理を行っていた可能性があるのではないかと考えられる。