経営者は企業価値,株主価値の向上が求められているが,企業価値の概念は必ずしも明確でない.企業価値の測定においてはフリー・キャッシュフローの予測,資本コストの推定など様々な工夫や,主観,判断が入り込み,職人芸的な要素も反映される.DCF法によって測定した株主価値のうち,構成要素としての無形資産(R&D資産およびブランド等)の金額は公表されている他の測定モデルによる結果とは大きく異なる.無形資産のうちR&D資産の部分は大きいが,ブランド等の部分は極めて小さい.株主価値と株価との関係についてに,DCF法では継続価値よりも予測期間価値が関係が強い,割引超過利益法はDCF法に比べて株価との関係が強いが自己資本の影響による,などが指摘される.企業価値の測定にあたっては,統計処理のような画一的測定ではなく,各企業の特性を考慮して測定する必要がある.