管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
17 巻, 2 号
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論文
  • 山本 達司
    2009 年 17 巻 2 号 p. 3-21
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文の目的は,「日本企業の株式所有構造の特徴である銀行支配,相互持合が,経営者の利益マネジメント行動にどのように影響を与えるのか」を理論的に説明することである.ゲーム理論の手法を用いて,経営者と株主をプレイヤーとする2期間モデルの分析を行った.分析結果は,次の2点に要約される.(1)日本企業は株式所有構造にかかわらず,一般に利益マネジメントを行う傾向がある.(2)株式所有構造によって日本企業の利益マネジメント傾向が異なり,最も強いのが株式相互持合企業,次に金融機関の支配力が強い企業,最も弱いのが特別な支配的株主をもたない企業ある.

論壇
  • 原田 昇
    2009 年 17 巻 2 号 p. 23-36
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    2008年度日本管理会計学会全国大会が甲南大学で開催された.本論文は本全国大会の統一論題「インタンジブルズ(intangibles)と管理会計」のもとで4名の報告者による研究報告内容をインタンジブルズの視点から論点を整序して位置づけを与え,その基盤となる共通の観点を示唆し,新しい管理会計のあり方や方向性を探求する糸口を提供することにある.もちろんこのことは必ずしも容易な仕事ではない.統一論題のもとで,各報告者による個別報告論題は,第1報告:伊藤邦雄氏「インタンジブルズと企業価値」,第2報告:青木茂男氏「企業価値の意味するもの」,第3報告:山本達司氏「M&Aにおける企業価値:行動ファイナンスの視点から」,第4報告:古賀健太郎氏「インタンジブルでに関する米国の視点と日本での適用可能性」であり,各報告者は貴重で非常に意義深い研究成果を報告された.コメンテータの小倉昇氏は,4名の報告者による研究報告に対して有益なコメントと問題提起を行い,参加者間で活発な議論を促進した.

  • 青木 茂男
    2009 年 17 巻 2 号 p. 37-47
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    経営者は企業価値,株主価値の向上が求められているが,企業価値の概念は必ずしも明確でない.企業価値の測定においてはフリー・キャッシュフローの予測,資本コストの推定など様々な工夫や,主観,判断が入り込み,職人芸的な要素も反映される.DCF法によって測定した株主価値のうち,構成要素としての無形資産(R&D資産およびブランド等)の金額は公表されている他の測定モデルによる結果とは大きく異なる.無形資産のうちR&D資産の部分は大きいが,ブランド等の部分は極めて小さい.株主価値と株価との関係についてに,DCF法では継続価値よりも予測期間価値が関係が強い,割引超過利益法はDCF法に比べて株価との関係が強いが自己資本の影響による,などが指摘される.企業価値の測定にあたっては,統計処理のような画一的測定ではなく,各企業の特性を考慮して測定する必要がある.

  • 山本 達司
    2009 年 17 巻 2 号 p. 49-64
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    M&Aは経営資源の効率的利用を促進し,不効率な経営を行ってきた経営者を排除する1つの有力な手段である。しかし,日本の株式市場にはTOBが円滑に実行できる環境が整っておらず,その原因は株式市場の非効率性にあると考えられる。そして,この非効率性を形成する2つの要因は,投資家の心理的要因と株式相互持合の慣行である。

    このような非効率な株式市場において,TOBを成功させるための現実的な戦略は,ターゲット企業の経営者に経営者地位を保証するとともに,経営者が友好的TOBに応じる最低限の経営者報酬を約束することである。

  • 古賀 健太郎
    2009 年 17 巻 2 号 p. 65-78
    発行日: 2009/03/31
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    無形資産が経済価値を生む原理には,「個別資産の経済価値の増大」と「資産の組合せによる経済価値の増大」とがある.人的資産に焦点を当てれば,前者は「従業員の能力を引出す」こと,後者は「従業員の協働を促す」ことに置き換えることができる.さらに,前者は,会計情報の意思決定誘導機能,後者は意思決定支援機能と密接に関係している.

    米国の管理会計研究は,「従業員の能力を引出す」ために,会計情報を用いて意思決定を誘導する機能について多くの成果を上げてきた.その一方,「従業員の協働を促す」ために,会計情報を用いて意思決定を支援する機能については十分に理解されていない.

    むしろ,日本において,意思決定の支援機能を研究する可能性が大きい.日本の実務が「従業員の協働を促す」ことを重視するからである.さらに,意思決定の支援機能と誘導機能との相互作用についても,研究の可能性が大きい.

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