本稿では,管理会計における実験研究の方法論妁な意義を整理すると共に,管理会計研究をより豊かにしていくために実験が担っていくべき役割について検討を行う.実験研究は,(1)dataのハンドリングが容易,(2)事前検証が可能(意図せざる帰結の発見が可能),(3)内的妥当性が高いという優位性を持つ.また,実験研究には,2つのタイプがある(複数人間の意思決定を取り扱いメカニズムの検証が得意な経済実験と,個人単体の意思決定を取り扱いヒトの心理バイアスの検証が得意な心理実験).管理会計では,主にマネジメント・コントロールの領域で実験が用いられ,また,特に心理実験のウェイトが高い.今後は,心理実験と経済実験との融合を図り,また,他の研究手法と良好なコラボレーションを図っていくことが望まれる.