2015 年 23 巻 1 号 p. 61-71
本論文では,予算管理が主要なツールとしてどのように能動的・主体的に戦略変化やイノベーションを促進し,戦略的な環境適応を実現するのかについて,ケーススタディに基づいて検討を行った.その結果,環境変化があろうとも予算を必達目標として維持し,それに適合するよう戦略や行動計画を臨機応変に変化させていくことによって,予算管理の管理会計計算,予算のリズムのそれぞれが戦略的文脈として構造を提供し,イノベーションや戦略変化の創出を導いていることが明らかになった.具体的には,予算管理における「補完的」管理会計計算によるイノベーションの創出,RMが予算のリズムからの逸脱によるイノベーションの創出である.さらに,予算が企業を取り巻く不確実な競争環境の解釈枠組みを提供し,それによって環境と組織行動の相互作用が可能になること,予算がイノベーションや戦略変化の場所・タイミング・スピード・大きさを決定していることも明らかになった.