管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
23 巻, 1 号
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論文
  • 片岡 洋人, 平井 裕久
    2015 年23 巻1 号 p. 3-19
    発行日: 2015/03/10
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    工程別総合原価計算の累加法において先入先出法(FIFO)を適用する場合,製造現場における原価管理活動をミスリードする可能性がある.なぜなら,FIFOによる累加法は,期首仕掛品から先に完成することを仮定した計算方法であるにもかかわらず,前工程の期首仕掛品原価が後工程の期末仕掛品原価に影響を及ぼす計算構造になっているためである.

    本稿では,FIFOによる累加法の計算構造をモデル化することにより,前工程の期首仕掛品原価が後工程の期末仕掛品原価の計算に及ぼす影響度f(j→j)を求める.その上で,FIFOによる累加法に内在する特性と問題点を明らかにするとともに,各工程の原価管理活動や様々な経営意思決定をミスリードする可能性について検討する.

    検討の結果,各現場担当者の物量感覚との間に乖離が生じる一因である影響度f(j→j)を測定し,各工程の管理者間で情報共有することが重要であることを示している.

  • 木村 史彦
    2015 年23 巻1 号 p. 21-41
    発行日: 2015/03/10
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本稿は日本の上場企業における業種間の利益マネジメントの水準と傾向の比較を通じて,事業内容と利益マネジメントの関係を解明することを目的とする.本稿では,各業種の利益マネジメントを,利益マネジメントの国際比較研究(Leuz et al., 2003)の方法を援用して定量化した上で比較検討する.日本の金融業を除く上場企業の2004年から2011年までの25,208企業―年を対象とする検証の結果,証券コード協議会が定めた業種別分類の中分類(33分類)に基づく業種間で,利益マネジメントの平均的な水準および傾向に顕著な差異が観察され,さらに企業に対する規制,企業規模,資金調達方法,会計上のフレキシビリティがこうした差異に影響を及ぼす要因となっていることが示唆された.また,これらの結果は異なる業種分類(日経業種分類・中分類)を用いた場合でも頑健であった.

  • 乙政 佐告, 近藤 隆史
    2015 年23 巻1 号 p. 43-60
    発行日: 2015/03/10
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    先行研究では,顧客満足と財務成果との関係は必ずしも明らかになっていない.本稿は,実務において,顧客満足度と財務成果との関係がどのように捉えられているのか,かつ,顧客満足の向上および財務成果の獲得がどのようにマネジメントされているのかについて,顧客満足経営に組織的に取り組んでいる株式会社星野リゾートの事例を通じて考察した.考察の結果として,同社では,顧客満足を向上すれば利益の増加につながることを基本認識としながらも,現時点において,顧客満足度と財務成果との因果関係のメカニズムを必ずしも十分に把握できていない.しかしながら,顧客満足度と財務成果との因果関係が不明確な状況にあっても,マネジメント・コントロール・パッケージの下で,顧客満足向上および利益増加の同時達成に向けてまい進していることを明らかにした.

  • 堀井 悟志
    2015 年23 巻1 号 p. 61-71
    発行日: 2015/03/10
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本論文では,予算管理が主要なツールとしてどのように能動的・主体的に戦略変化やイノベーションを促進し,戦略的な環境適応を実現するのかについて,ケーススタディに基づいて検討を行った.その結果,環境変化があろうとも予算を必達目標として維持し,それに適合するよう戦略や行動計画を臨機応変に変化させていくことによって,予算管理の管理会計計算,予算のリズムのそれぞれが戦略的文脈として構造を提供し,イノベーションや戦略変化の創出を導いていることが明らかになった.具体的には,予算管理における「補完的」管理会計計算によるイノベーションの創出,RMが予算のリズムからの逸脱によるイノベーションの創出である.さらに,予算が企業を取り巻く不確実な競争環境の解釈枠組みを提供し,それによって環境と組織行動の相互作用が可能になること,予算がイノベーションや戦略変化の場所・タイミング・スピード・大きさを決定していることも明らかになった.

  • 西居 豪
    2015 年23 巻1 号 p. 73-87
    発行日: 2015/03/10
    公開日: 2019/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,内部統制と戦略的業績評価システムとの関係性について明らかにすることにある.内部統制の整備は有効な管理会計システムの構築を支援する基礎的要因として説明されてきたが,その経験的証拠の蓄積は決して十分ではない.そこで本研究では,厳格な内部統制の実施が戦略的業績評価システムの構築を通じて業績に影響を及ぼす媒介効果と戦略的業績評価システム構築の業績への影響が内部統制の厳格さに左右される調整効果について,質問票郵送調査より収集されたデータを用いて検証を行った.分析の結果,内部統制の厳格さが戦略的業績評価システムの構築度を通じて業績に正の影響を及ぼしている一方で,戦略的業績評価システム構築による業績への正の影響を低めている可能性があることが明らかとなった.これらの結果は,管理会計システムが有効に機能することを保証する上で,内部統制の厳格さが重大な影響を及ぼすということから,両者を包含する分析視角が重要であることを示唆している.

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