2016 年 24 巻 2 号 p. 3-18
近年の管理会計研究においては,コストの下方硬直性という現象に関する議論および階層線形モデル(HLM)の適用可能性に関する議論が興味深い展開を見せている.売上高の変化に対してコストはどのように変化するのか,その売上高の大きさに影響を与える要因は何か,といった点を検討する意義は大きい.
本稿では,①それらの議論が従来の知見とはどのように相違するのか,②経営管理上,どのような新しいインプリケーションを得られるのか,および③今後どのように発展していくのか,というリサーチ・クエスションを設定し,コスト・ビヘイビアと原価計算という研究領域における現代的な役割期待と今後の検討課題を明らかにすることを目的としている.
以上を受けて,3名の報告者の報告論旨をまとめ,リサーチ・クエスションに照らしてコストの下方硬直性およびHLMの適用可能性に関する議論を整理した結果,学際的アプローチによる方法論および財務会計研究との接合点に,本統一論題報告・討論の特徴を見出している.