2020 年 28 巻 1 号 p. 117-129
企業が開示する財務データは有用な研究資源である.例えば,ある特定の管理会計システムの成果変数として,クロスセクショナルに抽出された財務データが使用される場合がある.しかし,財務データの決算月は企業によって異なるため,クロスセクショナルな財務データといっても会計期間が共通しているとは限らない.本論文では,このような会計期間の相違がサンプリングされた財務データの同質性に与える影響を検証している.なお,こうした問題を回避する手段として,会計期間が同じ企業の財務データのみを抽出するという方法も存在する.そこで,このような抽出方法を採用した場合のサンプリング・バイアスについても検証する.結果として,3月期と前年12月期の財務データが含まれるようにサンプリングすることで,より同質性の高いサンプルを得られることが示唆された.また,3月期の財務データのみを抽出すると,業種構成や企業規模の点でバイアスが存在するおそれがあることも明らかとなった.