2020 年 28 巻 2 号 p. 69-90
本研究では,「両利きの経営」という鍵概念をもとに,高次学習と低次学習を両立させるために必要なマネジメント・コントロールの要件について検討した.具体的には,以下の3つの異なる問題領域が確認できた.1つめは,現行事業を効率的に実行するためのマネジメント・コントロールである.新規事業創出に必要な探索活動のための資源を確保しなければ,始まらない.2つめは,新規事業内部で用いられるマネジメント・コントロールの整備が必要である.多くのスタートアップが急成長を遂げ,リーンスタートアップをはじめとする運営ノウハウが蓄積され,体系化されている.3つめは,探索と活用との間の最適資源配分,全体の構造設計に関する問題領域である.特に,新規事業創出のための活動は社内でも実施できるし,成果を外部から購入することもできる.全体として,どのようなポートフォリオをつくり,維持していくかを適切にコントロールする仕組みが必要である.