本稿の目的は,顧客関係を対象とする組織間管理会計研究の現状と課題を明らかにすることである.本稿では,まず,顧客関係の捉え方の多様性に注目し,提供者主導のアプローチ,双方向のアプローチ,顧客主導のアプローチ,という3つのタイプの研究が展開されていることを示した.つぎに,各研究群のレビューにより,特定段階から一連の業務プロセスにいたる様々な段階を対象に顧客との連携における管理会計の役割が議論されてきたのに対して,顧客参加が進むことで新たに生じる協働上の問題についてはいまだ理解が不足していることが明らかになった.最後に,将来の研究方向性として,水平的関係と階層的関係のテンションとそのマネジメント,顧客関係管理の担当者やチームの役割とその方向づけ,顧客の積極的な参加を重視した業務・プロジェクト推進の効果と問題,という3つの検討課題を提示した.