管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
29 巻, 1 号
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論文
  • 井上 慶太
    2021 年 29 巻 1 号 p. 3-17
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/30
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,顧客関係を対象とする組織間管理会計研究の現状と課題を明らかにすることである.本稿では,まず,顧客関係の捉え方の多様性に注目し,提供者主導のアプローチ,双方向のアプローチ,顧客主導のアプローチ,という3つのタイプの研究が展開されていることを示した.つぎに,各研究群のレビューにより,特定段階から一連の業務プロセスにいたる様々な段階を対象に顧客との連携における管理会計の役割が議論されてきたのに対して,顧客参加が進むことで新たに生じる協働上の問題についてはいまだ理解が不足していることが明らかになった.最後に,将来の研究方向性として,水平的関係と階層的関係のテンションとそのマネジメント,顧客関係管理の担当者やチームの役割とその方向づけ,顧客の積極的な参加を重視した業務・プロジェクト推進の効果と問題,という3つの検討課題を提示した.

  • 小笠原 亨, 早川 翔, 吉田 政之
    2021 年 29 巻 1 号 p. 19-31
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/30
    ジャーナル フリー

    相対評価の問題点として,被評価者間で能力差が大きい場合には,被評価者の努力を引き出せないことが先行研究で指摘されてきた.本研究では,この問題点に対する解決策として,追加的なモニタリングの実施に着目する.追加的なモニタリングとは,評価者が成果指標以外の追加的な情報を収集し,その情報を評価に利用することを意味している.例えば,成果指標の結果だけではなく情意考課・能力考課といった評価者の裁量を考慮して,最終的な相対評価の結果を決定する場合などがそれにあたる.本研究では,被評価者間で能力差が大きい場合にも,追加的なモニタリングの実施により被評価者の努力を引き出せることを示している.

  • 堀 好一, 辻 正雄
    2021 年 29 巻 1 号 p. 33-52
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,2002年に創設された連結納税制度を適用することによって,つぎの2つの利益調整行動が行われたか否かについて実証分析することである.1つは,親会社が赤字で欠損金額が生じている場合,法人税等支出額の削減を目的として連結納税制度を適用する可能性であり,もう1つは,法人税等支出額の削減行動に伴って起こり得る当期純利益の変動を抑えて財務報告コストの上昇を避けるために,法人税等調整額加減後の税金費用を調整する可能性である.分析の結果,親子会社間で所得金額と欠損金額を通算して法人税等支出額を削減している可能性があること,そして法人税等支出額の削減に伴う当期純利益の増加を抑えるために,評価性引当額を多く計上して税金費用を増額している可能性があることも示唆された.

  • 西居 豪, 近藤 隆史
    2021 年 29 巻 1 号 p. 53-69
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/30
    ジャーナル フリー

    本稿は,業績情報に基づく模倣行動による情報の形成と普及の解明にコンピュータ・シミュレーションの手法を適用した探索的研究である.特に,個人レベルでの模倣の成功確率の影響に焦点を合わせた.分析の結果,模倣の成功確率が10%もあれば,高い情報の有効性・普及度が得られる一方で,情報の有効性に対する成功確率の効果は逓減するなど興味深い発見が得られた.本稿は,ミクロな個人学習とマクロな組織学習とが結びつくメカニズムの解明に一定の知見をもたらすことで,今後の管理会計研究における学習概念拡張に貢献する.

  • 桝谷 奎太
    2021 年 29 巻 1 号 p. 71-90
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,「予算達成に向けてコントロールを行うのは組織間で共通するにも拘らず,その効果に差が生じるのはなぜか」という問いにひとつの説明を与えることにある.本研究の特色は,予算達成に向けたコントロール(診断的コントロール)の質に着目し概念化したうえで,その影響プロセスを詳細に検討した点にある.実証的分析の結果,行動選択の支援を強調する質の高い診断的利用は,質の高い意思決定プロセスの確立を通じ優れた効果(利益目標志向的な組織統合,環境適応)をもたらすのに対し,努力や服従を強いる質の低い診断的利用は,意思決定プロセスで様々な問題行動を引き起こすことが示された.こうした結果は,診断的コントロールの行使自体ではなく,その行い方の優劣という質的側面に着目することで,効果の多様性を説明できることを示している.加えて,予算達成に向けた質の高い意思決定プロセスの確立が欠かせないことを示している.

  • 谷守 正行
    2021 年 29 巻 1 号 p. 91-108
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/30
    ジャーナル フリー

    市場では「所有から利用へ」を実現するサブスクリプション・ビジネスが盛んである.サブスクリプション・モデルは,契約後に顧客が継続的にサービスを利用することで価値が高まる仕組みである.他方で,低収益環境が続く国内の銀行では銀行口座に継続的な手数料を賦課することが検討されている.

    最初に,これまでの管理会計の価格設定と比較しながらサブスクリプション・モデルによる価格設定を研究する.次に,サブスクリプション・モデルの価格設定を銀行のアカウントフィーに適用することによる銀行の収益性への影響をシミュレーションにより検討する.

    その結果,サブスクリプション・モデルを銀行アカウントフィーに適用することにより,共創価値を想定した価格設定が可能になり,企業収益性と顧客価値の両方を向上できることが分かった.

  • Meng Fanhong
    2021 年 29 巻 1 号 p. 109-125
    発行日: 2021/03/31
    公開日: 2021/03/30
    ジャーナル フリー

    In previous studies, the possibility and effectiveness of the integration of MFCA, SBSC and eco-efficiency have been theoretically examined to play their respective roles more effectively. However, few of these previous researches have verified the economic improvement effects of MFCA, SBSC and eco-efficiency as environmental management tools using specific financial indicators. Furthermore, there is no research that verifies the relationship between the use of these three tools and financial performance by objective indicators rather than subjective judgment. In this study, we used objective indicators such as ROA, ROE, ROS and Tobin’s q of the Chinese manufacturing companies to examine the relationship between the use of MFCA, SBSC and eco-efficiency and financial performance through multiple regression analysis. The results verified that only the use of MFCA has a positive effect on ROE. From the result, we can infer that the use of MFCA is likely to improve financial performance.

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