2023 年 31 巻 2 号 p. 47-67
本稿は日本管理会計学会2022年度年次全国大会の統一論題テーマ「わが国におけるコスト・マネジメントの現状と課題」をふまえ,企業競争力の源泉のひとつとされる現場改善に注目し,それを支援するコスト・マネジメントについて考察する.京都大学の上總康行名誉教授とともに筆者が提唱する現場改善会計論(Gemba Kaizen Costing, GKC)は,トヨタ生産システムと「設計情報転写論」に依拠する.GKCでは,原価計算に「機会損失」概念を導入することで改善効果の会計的測定を可能とした.さらに,コスト・マネジメントの視点を,改善により創り出された余剰生産能力というアウトプット管理へと変化させた.本稿では,GKCの概要のほかに,企業の実践事例を通じて,理論の実務貢献可能性についても検討する.