管理会計学 : ⽇本管理会計学会誌 : 経営管理のための総合雑誌
Online ISSN : 2434-0529
Print ISSN : 0918-7863
論文
損益分岐分析の離散型動的モデルへの拡張
後藤 晃範
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 7 巻 1-2 号 p. 49-63

詳細
抄録

短期利益計画設定目的のための伝統的損益分岐分析は、多品種CVP分析、非線形CVP分析、不確実性下のCVP分析など、これまで様々な拡張や展開がなされてきたが、それらいずれのタイプのCVP分析も対象期間内の経過時間の概念を導入していないという意味で静的モデルであり、費用と収益が時間の経過を追ってどのように変動するかについては、とりあげられていなかった。そこで、動的損益分岐分析が提案されたが、これは線形の費用関数と収益関数を前提としたいわばプロトタイプであり、実用的とはいえない。

そこで、この論文の目的は、伝統的な損益分岐分析にその対象期間内の経過時間を離散変数として導入し、動的損益分岐分析のプロトタイプモデルを離散型動的モデルへと拡張することにより、時間の変化を考慮した損益構造を分析しうる方法を提案し、さらに離散型動的損益分岐分析モデルを、時間、売上高、費用・収益の3軸からなる3次元空間により、企業の収益構造を図示する方法を提案することである。

提案するモデルは、1事業年度を対象とする分析であり、本モデルにおける時間は、1事業年度を構成する週、月および四半期末といった単位期間末ごとに分析する離散的な状況を扱うこととする。

各単位期間末での収益関数は線形関数として、また、費用関数は区分線形関数として取り扱われており、これを3次元空間に図示することで、1事業年度を通しての収益関数および費用関数は、各単位期間末で折れ曲がる区分曲面として表される。また、伝統的な損益分岐分析における損益分岐点は、3次元空間では、費用面と収益面の交差する損益分岐線として表される。

本モデルにより、短期利益計画設定、例えば、予算の編成において時間の経過をともなった損益分岐分析をおこなうことで、その補助的手段とすることができる。

著者関連情報
© 1999 日本管理会計学会
前の記事 次の記事
feedback
Top