人体科学
Online ISSN : 2424-2314
Print ISSN : 0918-2489
原著
わが国鍼灸療法における「視覚障害者要因論」の生成起源について
―機械論的身体観と気の観念を中心として―
山田 江理男
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2023 年 32 巻 1 号 p. 11-24

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抄録

明治期以降、わが国の鍼灸療法が漢方などの他の伝統医療のあり方と違いが生じた原因を、鍼灸が江戸期に視覚障害者の業とされ、視覚障害者の「社会的地位が低かった」という前提から鍼灸療法の衰退(医療の枠外に置かれたこと等)に紐づける視覚障害者要因論が一般化してきた。本稿では、この視覚障害者要因論の生成起源を詳らかにすることを目的として、文献調査により、機械論的身体観と気を鍵概念として主に史的考察を行なった。旧来の身体観としての気を忘却させた機械論的身体観の極点ともいえる優生思想の受容時期と、原初的な視覚障害者要因論の生成時期は合致する。封建領主の論理から近代国家の論理へと移行し、国家のための身体が理想とされる時代状況下(19世紀後半~20世紀前半以降)において、かつてE.ゴッフマンが論じた「スティグマ」化によって、鍼灸の視覚障害者要因論が生成されたことを明らかにした。

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