2021 年 21 巻 p. 1-6
本研究は,経営の厳しい中小旅館が外国人客を受け入れるため,先進的な旅館やホテルの工夫を先行事例研究として整理したうえで,特に高評価を得ている「山城屋」,「澤の屋」,「富士箱根ゲストハウス」の3軒の現地調査とインタビューを通じ,その特徴を導出した。調査の結果,3軒とも,1)古い施設の有効活用,2)外国語による館内表示や案内と基本英語でのコミュニケーション,3)他者との交流と家庭的なおもてなしなどが共通していた。外国人客の受け入れのために多額な投資をせずとも,多言語化対応やICT化などグローバル化により不便を低減し,他の客や地域住民との交流,日本文化体験により満足感を高めるとともに,家庭的なおもてなしによる日本の生活体験が魅力となることを論考した。