日本経営診断学会論集
Online ISSN : 1882-4544
ISSN-L : 1882-4544
21 巻
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  • 森下 俊一郎
    2021 年 21 巻 p. 1-6
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/13
    ジャーナル フリー

    本研究は,経営の厳しい中小旅館が外国人客を受け入れるため,先進的な旅館やホテルの工夫を先行事例研究として整理したうえで,特に高評価を得ている「山城屋」,「澤の屋」,「富士箱根ゲストハウス」の3軒の現地調査とインタビューを通じ,その特徴を導出した。調査の結果,3軒とも,1)古い施設の有効活用,2)外国語による館内表示や案内と基本英語でのコミュニケーション,3)他者との交流と家庭的なおもてなしなどが共通していた。外国人客の受け入れのために多額な投資をせずとも,多言語化対応やICT化などグローバル化により不便を低減し,他の客や地域住民との交流,日本文化体験により満足感を高めるとともに,家庭的なおもてなしによる日本の生活体験が魅力となることを論考した。

  • 酒井 理, 並木 雄二
    2021 年 21 巻 p. 7-10
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/10/21
    ジャーナル フリー

    サービタイゼーションの大きな潮流のなかで製造業はもとより小売業,サービス業に至るまでサービス提供システムの高度化が進化するなかで,中小企業におけるサービタイゼーションの取り組みは遅れている。それは専らサービタイゼーション手法の構築が未熟であることによる。サービタイゼーションに関する方法論の構築が必要とされており,具体的な手法が検討されることが求められている。いうまでもなく,それを評価するための診断メソッドも確立されてはいない。本研究の大きな目的は,サービタイゼーションの際のマネジメントの課題を明らかにしつつ,その課題を克服するための改善ポイントを整理していこうとするものである。研究の大きな目標に到達するため,一つひとつ研究課題をこなしていく。本稿では,継続的取引のビジネスモデル(リカーリング・ビジネス)を支えるサブスクリプションの収益モデルに絞って検討した。具体的には収益を生み出すための計算モデルの提示である。

  • 川村 悟
    2021 年 21 巻 p. 11-17
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/16
    ジャーナル フリー

    統計情報から中小企業診断士の課題を明らかにすることを試みる。研究目的は診断士に内在する課題を提示することである。診断士が課題を克服して発展すれば,社会に対する貢献度が高まるからである。リサーチ・クエスチョンを「統計から導くことができる診断士の課題とは何か」と設定する。研究方法として統計資料を活用し,それらを根拠に課題に関わる仮説を帰納的に導き出す。諸統計を通じて,資格に対する評価や社会的関心は高い一方,資格休止者数の増加などキャリアと資格が整合していない事例がみられる。一連の調査を踏まえ,「キャリアと資格の不整合が生じやすい環境にある」との仮説を提示する。

  • 佐野 達也, 横山 淳一
    2021 年 21 巻 p. 18-24
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/16
    ジャーナル フリー

    近年,情報化社会の発展により情報セキュリティの重要性が高まり,インターネットを利用する人々が情報セキュリティについて考える必要性が増している。そこで,本研究は学生を対象にして,情報セキュリティに対する意識を改善することを目的とした「意識改善ゲーム」の提案とゲームのプロトタイプの開発を行った。提案したゲームでは,ゲーミフィケーションを活用することによって,情報セキュリティ初心者に対しても情報セキュリティを学ぶことができることを期待した。また,情報セキュリティに関する「攻撃視点」に着眼し,ゲームに「攻撃視点」を導入することで,普段の生活においてどこに気をつける必要があるのかを知ることに期待した。

  • 辻 紳一
    2021 年 21 巻 p. 25-30
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/11/19
    ジャーナル フリー

    道の駅の農産物直売所は,鮮度が良く,安く,安全安心などの農産物の品揃えが消費者から支持され増加傾向にある。また,生産者との契約では委託販売契約が多くを占め,販売側の在庫負担を伴わないなどの理由から,消費者への積極的な販売促進に消極的なケースが多い。一方,和歌山県にある道の駅Kの農産物などを扱う直売所では,積極的な販売販促を行うことで出荷者数や売上高が増加する効果が見受けられた。よって本稿においては,道の駅Kの関係者からのインタビュー調査をもとに,ブランド戦略に焦点を当て,積極的な販売販促を行うメカニズムについて明らかにすることを試みる。

  • 湯川 恵子
    2021 年 21 巻 p. 31-37
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/02/18
    ジャーナル フリー

    本研究では,日本留学後に日本企業に就職した外国人材と日本企業の日本人管理者との間にある考え方のギャップを明らかにし,今後,日本留学後に日本企業に就職を希望する外国人材を日本企業が受け入れていくときに求められる方策を提言した。結果,日本留学後に日本企業に就職した外国人材にとって,日本の職場の魅力は良好な人間関係と会社の雰囲気であることがわかった。一方,「仕事をする上での不安」に関する項目や,「採用の際に外国人は日本人とは別枠で考慮されるべきか否か」といった項目でギャップがあることがわかった。この分析結果から,高度人材として日本留学後に日本企業に就職する外国人材を受け入れていくうえで,個人の能力評価の伝え方と職務経験に応じた採用活動への配慮が結論付けられた。

  • チョチョ ウィン, 加藤 里美
    2021 年 21 巻 p. 38-44
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/14
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は,経済産業省による「ダイバーシティ経営企業100選」と「新・ダイバーシティ経営企業100選」におけるダイバーシティ経営の特徴を明らかにすることである。2012年から2019年までの268社の報告書に関して計量テキスト分析(KH Coder)を用いて分析する。選定企業を年ごとに横断的にみた結果であるが,女性活躍推進の取り組みや経営成果が示された。地域別(東京都,大阪府,愛知県)では,東京都と大阪府の企業は愛知県の企業よりも女性活躍が推進されており,女性による経営成果も顕著である。また愛知県と大阪府では製造業が多く,特に愛知県は55以上であるため,ものづくり現場の高齢者の技術・技能伝承や外国人,障がい者の活躍も示された。

  • 大谷 隆児, 名取 隆
    2021 年 21 巻 p. 45-51
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/24
    ジャーナル フリー

    資源の限られた製造業中小企業にとって,環境変化に対応して新製品開発に成功し,大きな付加価値を創出するためには吸収能力が重要な役割を果たす。本稿では先行研究と事例を調べ,中小企業が吸収能力を高め,市場ニーズをとらえて機会認識して新製品コンセプトを創造し新製品開発に成功する促進要因について仮説提案した。仮説の内容は次のとおりである。すなわち,①自社商品・技術の情報発信をすること,②情報発信をきっかけに外部からニーズ知識とシーズ知識の両者を得ること,③機敏性を持つこと,④情報共有の仕組みを持つこと,⑤新製品開発を経験することで吸収能力が向上し,機会認識と新製品コンセプト創造が促進され,最終的に競争優位を達成できること,である。

  • 木村 勝則
    2021 年 21 巻 p. 52-58
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究は,2020年9月実施,日本経営診断学会全国大会予稿「藤井秀樹学説における会計評価論」および研究発表における研究途上の論文を日本経営診断学会論文投稿規定に基づき加筆・訂正したものである。1990年代後半から2000年代初頭まで,会計制度の大きな変革があった。藤井が,先駆者的に取得原価主義と実現可能性基準の関係を説明した。そして藤井は,生涯取得原価主義を貫き,終始一貫した理論を展開した。本報告のリサーチクエスチョンは,藤井が,取得原価主義会計にこだわった学術的な理由である。

  • 永井 昌寛, 後藤 時政, 横山 淳一
    2021 年 21 巻 p. 59-65
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル フリー

    超高齢社会を迎えた日本では,保健医療福祉分野の情報化,および,予防医療・介護予防の推進は重要な課題である。筆者らはこれまでに住民情報(集合知)と専門知を用いた新しい保健医療福祉支援情報システムを設計・提案してきた。本研究では,このシステムをもとに,保健医療福祉分野における予防医療・介護予防に向けて,「住民情報」および「家族見守り」を用いた保健医療福祉支援情報システムの構築を目指している。そのために,保健医療福祉を取り巻く環境等を把握し,予防医療,認知症予防,介護予防の支援情報システムの設計を通じて,家族見守り型保健医療福祉支援情報システムの設計アプローチの要点と課題について考察する。

  • 澤田 有香, 横山 淳一
    2021 年 21 巻 p. 66-72
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル フリー

    地方自治体の健康福祉担当部局の組織内連携を探るために,自治体が実施するイベントの実施状況を分析した。若年層の健康増進に効果的なイベントや連携先を見いだすために,健康を主目的としていないイベントも含め多重対応分析を利用して分析を行った。その結果,地方自治体の健康福祉担当部局が健康増進事業の展開や若年層との接点を持つために,教育委員会事務局や委員会などとの連携が効果的であることを示した。さらに,健康無関心層も健康的な行動ができる環境提供のために,行動変容ステージに合わせた情報提供や,参加により健康増進に寄与するイベントの推奨について健康福祉担当部局から連携先に協力を依頼することが効果的であることを示した。

  • 横山 淳一, 柴田 英治
    2021 年 21 巻 p. 73-79
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル フリー

    2002年の地域・職域連携共同モデル事業から発展してきた地域・職域連携推進事業は,めざましい成果をあげているという報告事例はあまり見られないものの,多くの関連組織をつなげる重要なインフラとしての役割が期待されている。本研究では,地域・職域連携推進事業についてシステム的な見地からその構造を示すとともに,事業を取り巻く4つの因果ループ図を示し,要素間の構造について明らかにした。さらに,地域・職域連携推進事業を効果的かつ効率的に運営するためのポイントおよび方策を示した。

  • 亀谷 佳保里, 横山 淳一
    2021 年 21 巻 p. 80-86
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/04/15
    ジャーナル フリー

    大規模病院の多くでは,医療政策の変化に伴い,求められる機能を充たすための新たな設備や機器の導入,病棟再編などに伴う改修や増築などの施設整備が行われている。しかし,施工後の施設では患者や医療従事者から動線の複雑化や水回りの不便さなどの不満が聞かれ,施設の整備が利用者の過ごす環境の向上に繋がっていない例も見られる。そこで,本研究では創設時から現在に至るまで優れた病院建築として評価されているA病院とB病院を事例として,資料調査と現地調査および施設の整備にかかわる担当者からの聞き取り調査により2施設の比較,分析を行った。その結果,医療の質を担保するための健全な病院運営の管理を基本とし,日常的に多職種が協同して施設整備のための計画にかかわっていることがわかった。2施設の取り組みから,質の高い医療を支えるために求められる施設整備計画の体制を提示する。

  • 渡邊 徳人
    2021 年 21 巻 p. 87-92
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/09
    ジャーナル フリー

    飲食店ブランドの海外進出時に,マーケティング戦略として,カントリー・オブ・オリジン(country of origin; COO)情報がもたらす経営上のインパクトについて考察する。具体的には,オーストラリア発祥の飲食店“bills”を事例とし,“bills”が日本およびアジア諸国で事業を展開した際に,COO情報が現地の消費者やステークホルダーに与えた影響についてケース分析する。COO情報は消費者のサービス購入時の意思決定に影響を及ぼし,ひいては国際展開する企業の経営戦略にも多大な影響を与えることがわかる。COO情報は飲食店ブランドにおける最重要ブランディング課題の一つであると言えよう。

  • 有馬 賢治
    2021 年 21 巻 p. 93-99
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/07/13
    ジャーナル フリー

    本論は,「マーケティング・ミックス(marketing mix)研究」の深耕を意図している。分析にあたり,マーケティング・ミックスにかかわる既存研究の成果,なかでもMcCarthy(1960)による“4Ps”を踏まえ,その説を補足するためにマーケティング・ミックス構想時の起点となる理念の存在を仮説として設定する。調査に基づき,マーケティング・ミックス構想時の起点となる理念の存在を確認したうえで,その起点となる理念との関連性から資源配分との関連性を分析する。そのうえで,“4Ps”の現代的意義,発展的使用方法の可能性,経営診断における着眼点に対する若干の含意の提示を試みる。

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