音楽表現学
Online ISSN : 2435-1067
Print ISSN : 1348-9038
和歌朗詠に見るリズム操作
百人一首朗詠を中心に
奥 忍
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2003 年 1 巻 p. 23-32

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抄録

本稿は「拍子を分割する単位拍としての間」の研究の一部分をなしている。これまでの研究から,聞き手が感じる拍感には,構音や音高など,さまざまな要因が働いていることが明らかになっている。そこで,今回は「時間長」に焦点を当て,旋律的要素よりもリズム的要素が優位であり,しかも表現法として様式化されている和歌の朗詠を取り上げた。朗詠と律読,朗読との相違点をリズムの視点から検討した上で,百人一首の朗詠の音声分析を通して,各句と単位拍,モーラの時間長配分によるリズム操作を明らかにする。検証された5仮説の中でとりわけ注目されるのは以下の3 点である。

・特定の語や句についての強調や,語句境界よりも全体の時間的な流れが優勢であること。

・単位拍,モーラは等拍/等時でなく,流動的であること。

・様式化された朗詠の中に演者個人の表現様式が存在すること。

この実験で明らかになったことばの流動的なリズム操作,モーラの時間長配分は,他の邦楽ジャンルにも共通している可能性がある。

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© 2003 日本音楽表現学会
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